タイトル 狼少年ケン
放映年 1963〜65年
放映話数 全86話
東映動画が自社として初のTV用アニメとして制作。月岡貞夫という天才アニメーターの才能が遺憾なく発揮された作品であった

声の出演:西本雄司、内海賢二、八奈見乗児、大竹宏、山本圭子、野沢雅子、はせさんじ、野沢那智、永井一郎ほか

雨の中のちょっと寂しげなケンとジャック。アニメの明るいケンと一味違う感じを描きたくて

 わ〜お、わ〜お、わお〜。虫プロが鉄腕アトムで颯爽とTV界にアニメデビューしたのを追うように、老舗、東映動画が送り込んだ作品が「狼少年ケン」。実は、わたしアトムよりケンの方が好き。森永ココアにかなり入れ込んで(笑)ものすごい勢いでシールを集めたあの頃…手元に残ってないけど…コタツの天板にべたべた貼りまくり、親に叱られたなあ。う〜ん、懐かしい。月岡貞夫さんという、手塚治虫氏から天才と呼ばれたアニメーターがこの作品を手がけたが、本編は兎も角、OPに関しては素晴らしい。アトムに比べたら技術的に随分と水をあけていると思う。東映動画、さすがに映画でフルアニメを作っていただけある。スタッフの技術レベルが高かったのだな、きっと。近年、ファミリー劇場で久々に本作を見たが、OPはわたしの頭に擦り込まれていたのが判明。細かいところまでよく覚えているものだと、我ながら感心してしまった。それだけ、ケンを真剣に見ていたのだろう
 あんた、何人?という風貌のケン、ニヒルで頼りになる片目のジャック、愛らしい弟分のチッチとポッポ。親代わりのボス、お笑い担当のブラック…個性豊かな狼達と楽しげに暮すケン。自分の住んでいる世界とはまったく異質の世界…この手の話は大好きなので、はまったのだろう。中でも、クールな片目のジャックには心ときめかせた(笑)まったく、子供の頃からこの手のキャラが大好きだったわけで、それは未だに変わっていない。ちょっと世を拗ねているが、いざとなれば頼りになるヤツ。主人公を陰で支える奥ゆかしさが際立つ、脇役な男(笑)アニメのキャラで好きになった人を考えてみても、やはり主役はほとんどいない。個性ある脇役好きは、アニメでも実写でも変わりないのである
 ケンもその風貌から、きっと今なら地上波放映は駄目なんだろう。腰布だけってのも人種差別とか言われそうだし…(それにしても、アフリカに狼っているのか?)。あの時代、のびのびと草原を走っていたケンは、貧乏だけど元気があった日本という国のようで、懐かしさとともに、よき時代を思い起こさせてくれる。すれちがう人が引ったくりに見え、小学生が防犯ベルを持ち歩くこの時代。昭和三十年代がブームになるのもなんとなく分かる。良き日本の姿をそこに見ることができるからなんだろうなあ(2003.12.2)