●田村高廣

 今年は訃報が続いた。中でも、田村高廣さんはショックだった。ちょうど、彼が亡くなった前後、時代劇専門チャンネルで錦ちゃんの「鬼平犯科帳」と小林桂樹版「仕掛人藤枝梅安」が放映されていた。べらんめい調でさばさばした感じの岸井左馬之助も、女房子供を殺された悲哀を背負う仕置人・彦次郎も、どちらも素敵だった。どのような格好をしても品があるのは、彼の天性のものだろう。美しい人だった
 友人は弟さんの正和さんの大ファンで、彼女に誘われ舞台を見に行った。花道の横で、正和さんを堪能。その時、ふとした感じがやはり高廣さんに似ていると思った。亮さんにもそう感じている。阪妻さんの映画を観た時は、ああ、高廣さんになんと似ているのだろうかと思った。血は水よりも濃いものなのだ。脈々と流れる美しい遺伝子(笑)ああ、素晴らしい…
 現代劇でも田村さんは印象に残っている。わたしの世代なら百恵ちゃんのドラマ「赤い衝撃」か。三浦友和さんの父親で、頑固な刑事役。百恵ちゃんの義父(中条静雄さん。うさぎ!と百恵ちゃんを呼ぶのが印象的)を追っている立場で、友和さんと百恵ちゃんを引き裂こうとする。いやあ、けっこうこのパパに魅かれましたよ。なにせ、筋金入りのオヤジ好きだもんで(笑)トレンチコートを着た高廣さんは素敵だった。ほんとうに、またいい役者さんが逝ってしまった。悲しいことである(2006.7.12)
名前 田村高廣
生年月日 1928年8月31日生、2006年5月16日、77歳で死去
主な出演作 「二十四の瞳」、「泥の河」、「眠る男」ほか。TV出演も多数
MEMO 阪東妻三郎の長男。田村正和、亮と役者一家。サラリーマンであったが、父の死去に伴い役者家業へ。
美男であり、品がある顔立ちだが、渋い演技で脇に回っても存在感があった