タイトル 家光と彦左と一心太助
公開年 1961年
配給 東映
中村錦之助主演の、人気シリーズの4本目。沢島忠監督のテンポあふれる演出に、錦之助の抜群の演技力で、楽しいエンターテインメント作品に仕上がっている

出演:中村錦之助(萬屋錦之介)、進藤英太郎、中村賀津雄、山形勲、平幹二朗ほか。監督:沢村忠

魚屋姿でも品がある、家光バージョンの錦にい。役の演じ分けが堪能できる1本

 いや〜笑った。久々に声をあげて笑える映画である。いいなあ、この時代の東映時代劇。シリアスでもコメディでも、そこはかとなく品があって、豪華で。東映はもっとこういう作品を大切にしなくてはいけない。DVDもどんどん出して(もちろん、古い作品はデジタルリマスターして)日本文化を守るという気概を見せてもらいたい。今からこのような作品、作ろうと思っても作れないのだから
 で、一心太助である。今月、BSで一心太助シリーズ5本のうち、「江戸の名物男・一心太助」、「一心太助・天下の一大事」、「一心太助・男の中の男一匹」が放映される。BSをご覧になれる方はぜひ見ていただきたい。楽しいこと請け合いである。本作はその4本目。忠長を将軍に祭り上げたい一派による家光暗殺未遂事件から、家光が太助と入れ替わり、それによって起こる珍騒動を描いている。錦にいの凄いところは、家光である家光、家光が化けた太助、太助である太助、太助が化けた家光と演じ分けているところだ。(ややこしいが…)それがまた可笑しいのなんの…魚屋の姿をしながら品よくそぞろ歩く家光や、裃はいて天秤棒担ぎを彦左に見せる太助…まったく違う人間に見えるから凄い。錦にいの面目躍如である
 本作でぴかっと光っているのは、平幹二朗さん演じる柳生十兵衛。家光警護のため、魚屋に扮し、べったりと家光についているのだが、なかなか捌けていていい男だった。庶民の心情にも通じ、世情にも明るい男という十兵衛がいたから、家光は太助に化けてなんとか過してこられたのであろう。魚河岸や、手討ちにいたす!という場面での連携プレーは抜群だった。忠長役は実弟の中村賀津雄さん。今の渋い性格俳優的な感じとは違い、若くて可愛いお殿様である。兄弟だから顔も似ているし、息の合った立ち回りも見られる。それにしても、赤木春恵さん。継子いじめの長屋のおかみさん(まったく渡る世間は鬼ばかりな、鬼のような役だ<^0^>)を演じていたが、錦にいの映画にもよくご出演されている。でも、昔も今もあまり変わらないなあ…それって、凄いことである(2003.11.8)