タイトル 丹下左膳
公開年 1958〜66年
製作本数・配給 全5作・東映
東映製作、大友柳太朗主演の丹下左膳。本作のほか<怒濤編>(59年)<妖刀濡れ燕>(60年)<濡れ燕一刀流>(61年)[以上、監督:松田定治]<乾雲坤竜の巻>(62年)[監督:加藤泰]

出演:大友柳太朗、山形勲、大川橋蔵ほか

大友柳太朗さんの明るく憎めない丹下左膳。可愛い男ってこういう男かな

 姓は丹下、名は左膳。片腕、片目で、滅法剣の腕が立ち、お人よしで、憎めない男。大友柳太朗さん演じるの丹下左膳は、歴代のニヒルで虚無感漂わす左膳のイメージとは違い、明るくコメディタッチ。個人的には、この左膳、好きである。白地に髑髏の絵が描かれた着物に、派手な長襦袢。凶状持ちの粋な姐御、お藤に惚れられ、ヒモ同然の生活を送っている。片腕での立ち回りは、迫力満点。がっしがっしと相手を斬っていく。わたしが、先日、日本映画専門チャンネルでみた<丹下左膳・怒濤編>は、松田定治監督が亡くなられたことを追悼しての放映だった。何度かTVで丹下左膳ものを見たが、この左膳はなんか気に入ってしまったのだ。見ていて、気が滅入らないのがいい。チャンバラ映画は楽しくなくっちゃ。大川橋蔵さんの与力はめちゃめちゃ恰好良いし、月形龍之介さんの大岡越前も渋くてよい。悪役も山形勲さんが演じ、これまたツボにはまる。左膳が引き取った子供、チョビ安を演じる松島トモ子さんの芸達者ぶりには驚くばかりであった。笑えたのは吉宗役の里見浩太朗さん。顔が真っ白だ。里見さん、お歳を召されてからずいぶんと男振りがあがったのだなあ…と妙な感心をしてしまった
 丹下左膳を演じた役者…嵐寛寿郎さん、大河内伝次郎さん、月形龍之介さん、阪東妻三郎さん、水島道太郎さん、丹波哲郎さん、萬屋錦之介さん…スターばかりである。大友版は5本制作されているが、たぶん子供の頃からTVで見たりしていたのだろう。左膳といえば大友さんのイメージが強いのである
 大友柳太朗さんは好きな役者であった。本作以外でも、数えきれないほどの作品にご出演されている。赤穂浪士の堀部安兵衛、右門捕物帳のむっつり右門…4月にBSで放映される<新吾十番勝負>では徳川吉宗を演じている。<タンポポ>出演の後、不幸な死を遂げられたが、ご本人はスクリーンの天真爛漫なイメージとは違い、ずいぶんと真面目な方だったようだ。真面目ゆえに、与えられた役を一生懸命演じていたのだろう。その気迫がスクリーンから伝わってくる(2003.3.29)