タイトル 運命峠
放映年 1974〜75年
放映話数 全21話
田村正和をご贔屓にした、柴田錬三郎原作。徳川家光の双子として産まれたため、捨てられた秋月六郎太。彼が豊臣秀頼の遺児とその母と出あったために、運命が動いていく

共演:大谷直子、渡辺篤史、戸浦六宏、堀越陽子、伊吹吾郎、吉田義夫、佐藤慶ほか。柳生但馬守を近衛十四郎@だんな〜が大迫力で演じる

正和さんの月代姿って思い浮かばないなあ。総髪が彼の面ざしに似合うのか

 板妻こと坂東妻三郎さんの格好良さは大人になってから知った。大迫力の大立ち回り。裾をからげての走りっぷりも男らしい。その阪妻には美形の四人の息子達がいた。長男は田村高廣さん。一番面ざしがお父さんに似ている(と思う)。木下恵介監督からして[こんな美しい眼をした]と言わしめた眼差し。色気があるなあ…わたしの一番のご贔屓は彼なのだ。次男は芸能界とは関係ない方。三男が田村正和さん、そして四男が亮さんである。あまりにも美しすぎる兄弟…
 中でも、田村正和さんは未だに二枚目街道まっしぐらの希有な方である。先日も明智小五郎を演じていたし、秋には主演ドラマも控えている。古畑任三郎は当たり役だし、シリアスからコメディーまでこなす器用な方でもある。だが、彼は時代劇もよいのだ。錦之助さん主演の<赤穂浪士>で演じた堀田隼人、<乾いて候>の腕下主丞、そして<運命峠>の秋月六郎太…みな、一筋縄でいかない過去を持ち、クールだ。そして、クールの極み、本作と同じ柴田錬三郎さん原作の<眠狂四郎>。転びバテレンと情を通じた女から生まれ落ち、その母は黒ミサの儀式により命を落とす…江戸時代で混血児である。出生からして普通じゃない。柴錬小説に流れる、虚無の雰囲気を田村正和さんが美しく演じている
 子供の頃、母と正和さんの舞台<眠狂四郎>を桟敷で見る機会があった。が、惜しいことに、芝居など子供には退屈なだけだった。舞台の上の正和さんは美しかったけど…ああ、もったいない…
 さて、最後に本作についてだが、見所は柳生但馬守を近衛十四郎さんが演じていることだろう。だんな〜のイメージとは違う、超シリアスで怖い役。彼と供に正和さんらの命を狙わせるのが吉田義夫さん。悪役がいいと劇が締まる。この二人の怪演も観る価値がある