タイトル 伝説巨神イデオン・発動編
公開年 1982年
配給 松竹
ガンダムの富野善幸が監督したTVアニメの映画化。TV版が39話と中途半端に終わってしまったため、物語を映画版で完結。TV版ダイジェストの<接触編>とラストを描いた<発動編>の2部構成で劇場公開された

声の出演:塩屋翼、白石冬美、田中秀幸、井上遥、戸田恵子ほか

メシアに導かれ、それぞれの魂が宇宙を舞うラストシーンが美しかった

 <機動戦士ガンダム>は息の長いアニメである。ファーストガンダム(…と呼ぶらしい)世代で、TV版から映画版、すべて観ているが、わたしにとっては本作の方が衝撃的だった。<伝説巨神イデオン>はTV放映は43話の予定が39話で終了してしまい、中途半端な終わり方だった。それゆえ、TV版ダイジェストの接触編とラストを描いた発動編の同時公開で、イデオンの真の意味を知ることが出来た
 ガンダムでも男女の恋愛が描かれていたが、イデオンではそれをもう一歩突き詰め、異星人同士の恋愛から妊娠にまで至る。ヒロインが懐妊するアニメなんてあまりないのではないか?そして、その子が<メシア>である。救済の主として、全てが滅びた後、また新しい生命が生まれるのを導くもの…輪廻転生を描いている。それにしても、今から思えば過激な描写が多かった。子供の頭が吹っ飛ばされたり、姉の手によってカララが殺されるときは、真正面から頭部を撃ち抜かれる描写まである。なにせ、誰も生き残らないのだから、容赦ない描き方も致し方ないか
 本作の作画の中心となった湖川友謙さんは好きなアニメーターの一人である。顎のしっかりした、骨格豊かな人物を描くのが特徴。真っ赤なアフロヘアの主人公、コスモを見たときには、その個性の突飛さに驚いた。個人的にはバッフ・クランの人たちのデザインが好き。中でも、主人公カララの姉、ハルルがお気に入りである
 イデはすべての憎しみを根絶やしにするため、和解できない愚かな者を戦わせ、全てを滅ぼした。その後、メシアの手で新たな世界を築く…人類もこのままではイデオンと同じ道を歩むかもしれない。果たして、その時にメシアは生まれるのか?キナ臭くなってきた世界を眺めながら、本作のラストを思い出していた(2003.2.19)