終演をむかえる命のロウソクの炎はとても小さく弱い・・・。
けれど、本当に最後をむかえた時、その炎はとても大きく、とてもまぶしく輝きます。
自分の存在を示すように・・・残った命のすべてを使って。

何度かの大気圏突入日の変更後、クヴントモジュールのドッキングポートに結合された特別製のプログレスM1−5輸送船。
プログレスのエンジン噴射でブレーキがかけられ、ミールの地上からの高度は300kmを切り、地上へと接近していきました。


モスクワ時間2001年3月23日午前8時44分
(日本時間同日午後2時)


ミールの体は地球を取り巻く大気圏に突入しました。





1つの命がゆっくりと消えようとしています・・・。
全身を炎にかえて、輝きを増しながら・・・自分を産んでくれたお母さんの元へ。
人々を守ってくれる大気圏も、今では侵入者を拒み消滅させようとする厚い壁となっています。
溶けていく身体。
引きちぎられていく体。
襲い掛かる摩擦熱と衝撃。

大気圏を抜ける数分間の間、はたしてどんな景色が見えていたのでしょう?
灼熱の炎?
青い地球?
暗黒の宇宙?
答えは誰にも分かりません。

しかし、外の状況を伝える船内のディスプレイには、地球の姿と船体の異常を示す警告が表示されていました。
修復される事のない警告がいくつも。
そして、船内には警報が響き渡ります。
船体の活動が停止するその時まで・・・。



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