光ヘテロダイン計測とは?
様々な光計測に比べ高精度、高ダイナミックレンジなど優位な点が多い計測方式です。
優位性について
光計測手段により様々な物理量が計測されていますが、光ヘテロダイン計測は次のような利点を有します。
高精度である ;光の位相を基準にしているため光波長(HeNeレーザでは633nm)が物差しになります。更に、レーザ光の波長はΔλ/λ〜0.000001以下の揺らぎです。(但し、このフリーランニング状態での使用は高精度計測には誤差が大きい)
低速度に対応できる ;光の位相変化を波長を基準にして計測するので基本的に被測定物の速度は問題としません。ドップラー効果を利用した装置では、変位量はドップラー効果で求める速度から積分することで算出しています。積分計算処理が入るため、低速度では誤差が拡大します。つまり、光ヘテロダイン計測では”速度のある物体”を前提としません。
低反射率の被測定物でも計測出来る ;光量変動を検出するシステムではなく、光干渉により得られた特定周波数の信号にのみ着目するため、光量変動は誤差要因にはなりません。被測定物が運動することで、反射率が変動する場合でも、原理的に誤差を発生しません。
遠方でも計測出来る ;被測定物から反射光があればよく、反射光の位置については制約がありません。特定位置に被測定物がある必要もありません。つまり、広いダイナミックレンジです。但し、高精度計測を考慮する場合、1nm精度は、その光源の光周波数の安定度より、被測定物をプローブ先端より50cm程度以下に抑えなければ達成できません。
距離を直接計測する ;光の位相情報から、直接光波長の単位である”長さ”を求めています。余分な演算はしていません。
汎用性に富む装置である ;上記のような性質を通して装置の融通性が高く、汎用性に富みます。2次元、3次元計測の他、顕微鏡、CCDなど他の光学装置と組み合わせて、ダイナミックな被測定物の動きを解析できます。
以下に簡単にヘテロダイン計測原理を述べます。
光ヘテロダイン変位計は極めて微小な距離をレーザ光を用いて非接触で計測する装置です。計測原理の光ヘテロダイン方式は光の周波数や位相を直接計測します。この方式では外乱に強く、精度の高い計測が実現されます。以下に簡単にヘテロダイン測定法を説明します。なお、光ヘテロダイン測定に関しての詳しい説明は参考文献を参照下さい。

図1 ヘテロダイン変位計測の原理図
部品の説明 PBS;偏光ビームスプリッター、NPBS;無偏光ビームスプリッタ
M;ミラー、Pol;偏光板、WP;波長板、Det;光検出器
周波数が極めて安定化されたHeNeレーザ光からの出射光はミラー(M)で折り返された後、偏光ビームスプリッター(PBS)で2つの偏光成分に分けられます。p波光はf1の周波数で変調されている音響光学変調器(AOM)に入射します。AOMからの一次光はf0+f1の周波数をもっています。一方、s波光のAOMからの出射光はf0+f2の周波数をもっています。無偏光ビームスプリッター(NPBS)で両者の光は一部取り出され、偏光板(Pol)で偏光を合わされた後光検出器に入射します。光検出器は和周波、差周波の周波数信号を得ます。しかし、f0が数百THzと極めて高いため、差周波数(f1−f2)のみがビート電気信号として得られます。2つのAOMとその前の光分岐回路を含めて1つの部品としたのが周波数シフターです。(周波数シフターのページ参照〕
NPBSを透過した光はPBSで分けられ、p波は1/4波長板(wp)を透過して測定面に向かいます。測定面からの反射光は再び1/4wpを透過してs波となり、偏光板を透過した後、光検出器(Det)2に入射します。s波はPBS反射後1/4wp、M、1/4wpの順序で透過し、p波となって、偏光板を透過し、Det2に入射します。従って、Det2はMからの反射光と測定面からの反射光による干渉が得られます。測定面からの反射光には二つの情報が含まれています。位相変調と周波数変調です。位相変調は測定面までの距離が変動した場合に発生し、周波数変調は測定面が速度を有している場合に発生します。従って、Det2のビート信号を解析すれば測定面までの距離と速度が得られます。この信号解析に於いて、Det1の出力は基準信号として使われます。
以上がヘテロダイン計測の原理的概略です。
この測定方法には、原理的な欠点もあります。この欠点をご理解の上ご使用下さい。つまり、反射光からの位相情報を距離情報に変換して変位量を計測していますので、位相差 −2π≦位相差≦2πの条件を全て満たすことを前提に計算処理されます。従って、この範囲外の変位となる場合には2Nπ(N;整数)の位相に相当する誤差が発生します。これより、隣り合うサンプル時刻間(サンプル時間間隔)内にλ/2以上の変位があった場合には、計測結果は真値を表示しません。この場合にはサンプル時間間隔を短くして下さい。
この計測原理をアレンジして微小変位を計測するのが本変位計です。本装置は幾つかの優れた性能を有しています。1nmの高分解能。1m/sまでの速度検出が出来ます。さらに1MHzまでの振動周波数計測を可能にしました。これらは従来の変位計に比しいずれの点も勝っています。この条件下に於いて最高0.1μsごとの計測で行うことが出来ます。また使いやすいフロントパネル、LCD表示、外部出力・外部記憶装置の充実にもユーザの立場に立って開発しました。
また、これらの精度を実現するためには光源はフリーランニングのレーザでは不十分です。レーザの周波数を制御して安定化させねばなりません。そのために通常は周波数安定化レーザ(主にHeNeレーザ)が使われます。(周波数安定化HeNeレーザのページ参照)。周波数の安定度として約500THzの周波数に対して変動が8MHz程度に抑えられていなければなりません。この安定化の方法として様々な方法が取られています。更に、周波数安定化レーザ(通常のレーザも)は戻り光に弱く、周波数の安定度を劣化させます。従って、各部からの戻り光を制御しなくてはなりません。HV350の本装置はこの戻り光を抑えるために、アイソレータを組み込んでいます。
次の文献も参考にしてください。
(1)書籍”光ヘテロダイン技術”、新技術コミュニケーションズ、ISBN 4-915851-11-7
(2)ハンドブック”Handbook of OPTICAL METROLOGY", Chapter 10, "Optical
Heterodyne Measurement Method",CRC Press, ISBN 978-0-8493-3760-4

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