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晴れた早春の午前、静かな戸田湾の入江では無数の小さな波が反射する光の模様が美しい。

漁船の群れが港を出て南の海に向かって行く。 イージス艦と遭遇しないことを祈る。

木々に覆われた急峻な崖がストンと海に落ち込む典型的な西伊豆の海岸線。 ここでも細かな波が作り出す模様が美しい。

2月の井田の海岸では、美しい富士山の姿を愛でる者は数人の釣り人以外誰も居なかった。 静かというより寂しかった。

県道17号線沿いの 「 煌めきの丘 」 から井田の集落を見下ろすと満開の菜の花が 「 井田 」 という文字を描いていた。

その色が非常に鮮やかだったので、下まで降りて行った所、やはり非常に濃い色の種類のものだったようだ。

大瀬崎から紺碧の駿河湾と愛鷹の山塊越しに見る富士山は、間近なだけにわざわざ歩いて見に行った甲斐があった。

大瀬崎の突端にある大瀬神社は想像をはるかに超える立派な社であった。 絵馬殿には何十もの大小の漁船の模型が、安全を祈願して奉納されてあった。

夕暮が迫った土肥の海の空と水の微妙な色彩は本当に美しかった。 技量が未熟でそれを十分に表現できなかったけれど・・・

しかし対岸の静岡市のあたりに沈んでゆく日没の瞬間は、何とかその美しさを画面に収めることができたように思う。

翌朝、宿の玄関の前では2月末だというのに、早咲きの桜が満開で、ハラハラと美しく散り始めていた。
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