フリーマンの随想

その65.記念館の残念な英語解説


* 話す時は大胆に、書く時は謙虚に *

(OCT. 30. 2004)


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 今年の10月上旬、4日ほど宮崎から鹿児島にかけて短い旅をした時、いくつかの立派な記念館や資料館 ( 特に名は伏せます。  特攻隊の記念館ではありません。 あそこの英語は立派だったと思います ) も訪ねましたが、 展示の解説に添えてある英語の文章の中に、私の英語力でも首を傾げたくなるような部分がいくつも目につき、気になり続けていました。  本件については、長くなるので、別のページを起こして、ここに書くことにします。

 私の独断ですが、これらの解説は、おそらく、近くの大学か高校の英語の先生に頼んで翻訳させたのではないかと想像します。  もしそうなら、日本人のうち、相当多くの人が 「 英語の先生なら正しい英語の文章が書ける 」 と、 単純に考えているからこうなるのではないでしょうか。

 でも、そんな事はないのです。 米国や英国などを母国として生まれ、 そこで育ち、しかも英語によるキチンとした教育を受け続けた人、あるいは、これらの国の外で生れても、 これらを母国語とする人を少なくとも一方の親とした家庭に生まれ、英語で教育するちゃんとした学校で初等教育以降の教育を受けた人、 そういう人々のの中でも、ある程度以上の能力と学力を備えた人たちだけが 「 正しい、分かりやすい 」 英語の文章を書けるのです ( 日本語の場合だって同じことですが )。

 これは決して自慢ではなく、おどろくべき実話として受け取ってください。  私は在米中、米人技術者のレポートや米人弁護士が書いた訴状の中の文法上の誤りを、 見つけて指摘したことが何度もあるのです。 最初は驚きましたが、そのうち 「 そういうものか 」 と考えられるようになりました。  もちろん、彼らはあまりレベルの高くない部類の人たちで、ちゃんとした技術者や弁護士にはそういうことはないのですが。

 最近ある米国人が私に送ってきた短い創作ジョークの中にも、キーのタッチミスなどではない、 明らかな文法上のミスが、2つもありました。  興味のある方はこのページの下の方にある間違い探しにご挑戦ください。  このように 「 アメリカ人なら誰でも正しい英語が書ける 」 なんて事は決してないということを、 次に頭に入れておきたいと思います ( 日本人の書く日本語の場合だって同じことです )。

 ましてや、日本で生まれ育ち、日本の学校で日本人教師に教育された日本人が書く英語は ( ごくまれに例外的な天才がいるとしても )、 通常は多少とも間違いや不適切さを含むものなのです。 それは当然のことであり、決して恥ずかしいことではないと思います。  もっとも、最近、日本の英語の教科書に出てくる英文の 「 おかしさ 」 が、英米人から指摘されているという新聞で読んだ記事・・・ これは恥ずかしいを通り越して、おおいに困ることです。

 英語を専門にする大学の先生方が監修した国家検定済みの教科書ですらこうなのですから、 5年や10年留学したり駐在したりした程度の日本人が間違いや不適切さのない長文の英語を書けるなどということはないと考えるべきです。  私は、以前このホームページに外人向けの英語のページを作り載せていたころは、自分で練り上げた英文を、 信頼できる米人の友人に送り、徹底的に添削してもらってからアップロードしていました。

 友人に宛てる私的な手紙などなら、多少の文法上の間違いなど構わないのですが、展示品の説明、 商品やカタログに書く文章、広告や看板、公式の招待状など、公式の書面、公表する文章は、 必ずネイティブの 「 キチンとした人物 」 に最後は監修してもらうべきなのに、それがしばしばなされていないのが日本の現状です。

 日本の地方都市の商店の看板や自治体の案内標識に書き込まれている英単語や英短文のうち、 少なく見積もっても2〜3割は間違いや不適切さを含んでいると、私は考えています。  「 看板を書く前に、なぜ念のため一度辞書を引くという労を惜しんだのか! 」 と思う単純なスペルミスさえしばしばあります。  有名デパートの売り場にも、巨大企業のCMにも、怪しい英語まがいの偽英語が出回っています。

 また、たとえば、街で見かけるTシャツや紙製のバッグや日用雑貨等に書き込まれている英語やフランス語の中には、 ふき出してしまうような珍妙な文章や間違ったスペルのものが、頻繁に見られます。 私の家で毎日使っている品の中にも、 そういうのがいくつかあります。  「 あれは外国語ではなく単なる模様の一部に過ぎない 」 とデザイナーたちは言い訳するかも知れませんが、 あれを着て ( 持って ) 外国の町を歩いたら、それを買って下さったお客様が笑われてしまいます。

 現在日本で使われている、英語の自動車関連用語のうち、バックミラー、フロントガラス、ガソリンスタンドなど相当の部分が、 偽英語、間違い英語であるということを、以前私はこのホームページに書きました

 これと似たことですが、私の現役時代の日本の工場では、多くの 「 英語らしき 」 設備、部品、工程、故障などの名称が長いこと、 毎日何気なく使われていました。  しかし、米国に工場を作り、米国人たちが日本の工場に来て実習を始めたとたん、これらのうちの何割かが、 日本人が作った 「 英語まがいの造語 」 であって、彼らには何のことかさっぱりわからないということが明らかになりました。  そこで、急遽、日本人と米国人が協力して厚い英和と和英の用語辞典をつくり、その後の米国工場の建設、操業、訓練に大きく役立ちました。

 私は、日本人が中途半端に英語が出来るから珍妙な造語を次々に行うのだと思います。  「 スキンシップ 」 なんて単語は、その最たるもので、実に本当の英語らしく良く出来た言葉ですが、実は違うんですね。  嘘だと思ったら英和辞典を引いてみてください。 載っていませんから。

 繰り返しますが、日常会話や私的な手紙などにおいては、もっともっと大胆に、多少の間違いなんか気にせずに、 勇気を持って英語を使うべきです。  ところが、そういう状況のもとでは 「 必要以上に臆病 」 になり、舌がもつれてしまって何も喋れない日本人が、 広告や看板や説明文を作るときには、実に 「 大胆に大小さまざまの間違いを犯し 」 ながら平気なのです。  堂々とそれを人目にさらし続けるのです。  話すときはもっとおおらかで大胆に、 書いて公表するときはもっともっと慎重で謙虚に・・・と訴えずにはいられません。



以下が、米国人の知人が送ってくれた創作ジョークです。

このジョーク中にある文法上の誤りは、どことどこでしょうか。 答は下の方にあります。  なお、申し添えますが、本題の記念館の解説文の問題点は、このようなマイナーなミスではなく、 助動詞の奇妙な誤用などのような大きなものです。

Question: What is the truest definition of Globalization?

Answer:Princess Diana's death.

Question:How come?

Answer: An English princess

with an Egyptian boyfriend

crashes in a French tunnel,

driving a German car

with a Dutch engine,

driven by a Belgian who was drunk

on Scottish whisky, (check the bottle before you change the spelling)

followed closely by Italian Paparazzi,

on Japanese motorcycles;

treated by an American doctor,

using Brazilian medicines.

This is sent to you by an American,

using Bill Gates's technology,

and you're probably reading this on your computer,

that use Taiwanese chips,

and a Korean monitor,

assembled by Bangladeshi workers

in a Singapore plant,

transported by Indian lorry-drivers,

hijacked by Indonesians,

unloaded by Sicilian longshoremen,

and trucked to you by Mexican illegals....

That, my friends, is Globalization



























1)昔学校で習った規則によれば、Bill Gates's technology はおかしいですね。 Bill Gates' technology でなくてはなりません。

2)その2行下の that use Taiwanese chips, は、your computer が3人称単数ですから、that uses Taiwanese chips, でなくてはなりません。

3)また、彼は on Scottish whisky, ( check the bottle before you change the spelling ) と主張していますが、 もしこれが読者を混乱させるための冗談でもなければ、これも正しくないようです。 正しくは Scotch whisky です。  ある辞書によれば 「 スコットランド ( 人 ) の 」 という形容詞は2つあり、ウィスキーや食物、織物などでは Scotch を用い、 その他の場合に現在は Scottish を用いるとあります。 次回酒屋に行ったらスコッチウィスキーの瓶を一つ一つ確認してみてください。
 それとも、彼は whisky の綴りを問題にしているのでしょうか。 英国ではスコットランド産は whisky 、アイルランド産は whiskey、 また、米国では輸入品が whisky 、国産が whiskey と綴り分けられる事もありますので。

 以上の3点については、念のため信頼の置ける米国の友人にも確認し、With respect to your questions, you are correct on 1) and 2).
3): It should be "Scotch" whisky, not Scottish. との返事を得ています。

 それと、これは単純なケアレスミステークでしょうが、一番最後にピリオドがひとつ欲しいですね。

ご感想、ご意見、ご質問などがあれば まで。