フリーマンの随想
![]() 失った大臼歯2本の替わりは、インプラントというものである。 それは下顎骨にドリルで穴をあけ、歯ぐきを貫いて径4ミリのチタニウムの柱を埋め込み、 これが骨としっかり癒着したら、その上に義歯をのせるという方式である。 米国在住時代、 慎重な事前 「 地盤調査 」 と、半日の全身麻酔手術を含む、半年間に4回の細心な 「 大工事 」 の末、 完成したもので、入れ歯のような煩わしさ ( といっても私はそれがどんなものか知らないが ) の無い、 普通の歯と全く変らぬ使い心地の良いものである。
食後直ちに清掃するこの方式は、
米国で Periodontist と呼ばれる歯周専門医に教えられた方法だが、その上、更に起床後と就寝前と、
日に合計5回も磨いたら歯が擦り減ってしまいそうなので、3食後だけにした。
食後の清掃と言っても、歯ブラシで彼の教えた通りの角度と強さで歯と歯ぐきをゆっくり長時間こするだけだ。
口をゆすいだ後、1日1回は更に彼のくれた4種の用具を順に使い、歯間をひとつひとつ掃除する。
その後口をすすぐと ( 汚い話で恐縮だが ) 歯磨きでもう全部とれたと思っていた食べカスが、
またもや数個出て来て、歯磨きだけでは不十分な事がよくわかる ( 日本にも爪楊枝というものがあるが、
上記の4種の用具と比べると竹槍とマシンガンほどの違いがある。 爪楊枝は歯ぐきを傷つけ易い )。
最後はマウスウオッシュ液で口をすすいで終りとなる。
普通の人はこの食べカスをすべて保ったまま長時間放置するから歯周に炎症ができて虫歯になるのであろう。 次に彼はひとつひとつの歯のポケットから丁寧にカスをほじくり出す。 ふつうの歯石除去 ( scaling ) ではなく、ルート・プレイニング ( root planing ) というものである。 30分X2日の結構大変な作業だった。 翌日からは彼の指導に従い、 毎食直後に丁寧な歯磨き、歯間の清掃および歯ぐきのマッサージを励行した結果、 2カ月後にはすべてのポケットは3ミリ未満になり、歯ぐきは健康なピンク色に変った。 何を食べてもいくら擦っても、もう血は出ない。 このような健康な歯ぐきになるまでは、彼は私が上記のインプラントの手術を受ける事を許さなかった。 「 あなたのポケットに細菌が巣食っている限り、感染症が恐いから顎の骨の穴あけは出来ません 」 という理由だ。
上記の歯周専門医は私に向かって 「 貴方が今後もこの手入れを守り続ける限り、 たとえ貴方が何歳まで生きようとも今ある 26本の歯は健康なまま残ります 」 と保証したが、 その後3年近くたった今、この大胆な予言はどうやら本当らしいと、私は実感しはじめている。 |
![]() ![]() ![]() ![]() [ ひと口メモ ] 「 家庭外での食事後はとても・・・ 」 と言う方に: 旅行には自分の気に入りの歯ブラシを持参し、そのかわりにホテルでくれる使い捨ての歯ブラシセットは持ち帰って、 通勤用のカバンやゴルフバッグに2、3本入れておく。 外食した後にも役立つし、 オフィスでも急に偉い人に呼ばれた時や大事なお客と密談したりする前に、 洗面所に行きこれを使う。 きっと相手に良い印象を与えると思いますよ。 特に喫煙者は。 |