RECOMMENDABLE DISCS [1] : REISSUES

このところアフリカ音楽の復刻状況が興味深い。ここ数年、欧米でアフリカの古い音源が次々にCD化されていて、個人的には新録ものよりこれら復刻ものの方を遙かに楽しんでいる。

ところが残念なことに、そうした状況は日本にはきちんと伝わっていないと言えるだろう。復刻CDの紹介は「レコード・コレクターズ」誌が唯一積極的に続けており、よく選択されたCDが取り上げられている。その反面、一誌のみによる紹介では、アフリカ音楽のファンにとって、まだまだ十分ではない。そして何よりレコード・ショップで手に入るCDの種類が余りに少なすぎる。

特に1997〜1999年頃にリリースされたCDが、日本ではすっぽり抜け落ちている印象を持っており、それらのうちでも内容が優れているものを選んでみた。ここで取り上げるCDの多くが、日本の音楽誌では紹介されていないはず。今購入しておかないと今後の入手は絶望的だろう。それぞれのCDを十分なスペースをとってリビューする余裕はないが、これはというCDは今のうちに手に入れておくことを勧める。

なお新録盤もここ数年の作品は復刻盤と同様に、日本ではきちんと紹介されていないため、ページを改めて取り上げることにする。

   
   

○RETRO 1XCD  ALL FOR YOU / E.T.MENSAH & THE TEMPOS  (RETROAFRIC,UK,1998)

 "KING OF HIGHLIFE"ことE.T.メンサーの率いるガーナのトップバンドの復刻CD。
 かつて西アフリカを席巻した音楽「ハイライフ」の名演奏が楽しめる。1990年リリ
 ース(国内盤も出た)のCDに3曲が追加収録され、音質も格段に改善しているた
 め、旧盤を持っていたとしても買い直す価値は十分。
 柔らかなTPとSAXの響き、明るいメロディー、絶妙なアンサンブルが素晴らしく、 
 いつ聞いても和む音楽が続く。アフリカ音楽を心底堪能できる1枚。
     
○FLTRCD 526  THE HIT SOUND OF THE RAMBLERS DANCE BAND  (FLAME TREE,UK, ? )
○FLTRCD 533  THE HIT SOUND OF THE RAMBLERS DANCE BAND VOLUME 2 (FLAME TREE, UK, ? )
 同じくガーナの代表的ハイライフ・バンドのアルバム。526は1990年のデッカ盤
 LPのCD化だが、533は初復刻かも知れない。選曲の多彩さでは526だろうが、
 個人的には533を聞くことが多く、昨年(1998年)の最愛聴盤であった。
 疲れているときにはついついこの2枚に手がのびる。難しいことを考えずに部屋の
 中で流しているだけで、いつでも気持ちをほぐしてくれる音楽。
 上手いのかどうか分からない歌とギターまでもが心地良い。
   
○DKS 016/CNR 20039388  SERIE SANGOMAR 1 / DEXTER JOHNSON (DAKAR SOUND,NETHERLAND,1998)
○DKS 017  SERIE SANGOMAR 2 / DEXTER JOHNSON (DAKAR SOUND,NETHERLAND,1999)

 ナイジェリア出身のサックスプレイヤー、デクスター・ジョンスンの初CD(2枚
 組)。彼は1950年代に活動を始め、60年代にはセネガルのトップバンド、STAR 
 BAND で活躍したことで知られる。1枚目は64〜74年の録音集と思われるが、ラ
 テンの影響色濃い曲が続いた後、8曲目でセネガルに独特な粘っこさが加わり、ン
 バラ成立の過程がかすかに伺われる。2枚目はライブ録音。貴重な復刻なだけに、
 解説がないことが残念。99年末には、第2集も出た。
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○DKS 014/CNR 2003620  DAKAR SOUND VOLUME 7: BAOBAB-N'WOLOF 
        (DAKAR SOUND/CNR MUSIC,NETHERLANDS,1998)
○PAM ADC 304  BAOBAB, ROOTS AND FRUIT (POPULAR AFRICAN MUSIC,GERMANY,1999)
 1970年代のセネガルを代表するバンド、バオバブのCD。驚愕的な復刻である。
 前者はバオバブ結成直後(1970,71年)の音源集で、彼らのファーストアルバム
 収録曲が多いが、シングルからの復刻もあるのではないか。独創的セネガル音楽
 の出発点に触れることができる。後者は超レアな70年代のアルバム収録曲に最近
 発見されたカセットの音源が加えられている。304に添えられた解説、ディスコ
 グラフィー、写真も貴重な資料である。詳細はディスコグラフィーを。
   
○STCD 3014  YOUSSOU WITH ETOILE DE DAKAR VOLUME 4 : KHALEY ETOILE (STERNS,UK,1998)
 ユッスー・ンドゥールとエル・ハジ・フェイが在籍した1980年代のセネガルのト 
 ップバンドの復刻シリーズ4枚目。3枚目までは国内盤も出ていたが、これは輸入
 盤が少数入ってきただけの様子なので、見落としている方もいるのでは?
 ユッスーのファンにとっては当然必聴のCDである。
 もともとカセットで5本リリースされていたこのシリーズ、なぜかCDは4枚で打
 ち止めらしい。
    
○DKS 012/CNR 2003290  PAYA-PAYA / HOROYA BAND (DAKAR SOUND,NETHERLANDS,1997)
 ベンベヤ・ジャズと並ぶギネアのトップバンド、ホロヤ・バンドの初CD。
 全盛期のギネア音楽の醍醐味が文句なく味わえる。
 彼らのオリジナルLPとシングルはいずれもほぼ入手は不可能であり、このCD以
 外で彼らの演奏を聞くことも難しいため、価値あるCD復刻と言える。
 「レコード・コレクターズ」1998年3月号で紹介されている。
 最近、ギネア関連の復刻が進んでいることは見逃せない動きだ。
    
○RETRO 2XCD  ORIGINALITE / FRANCO & OK JAZZ (RETROAFRIC,UK,1999)

 コンゴ(旧ザイール)出身の偉大なミュージシャンであるに止まらず、アフリカ音
 楽史上最大の巨人フランコの最初期の録音集。当然、全てSPからの復刻。
 E.T.メンサーのCDと同様に、大幅な音質の改善が施された上での再発。追加収録
 された4曲中の3曲はLPでのリリースもなかったはず。
 これを聞くとフランコの音楽が初めから完成の域に達していたことが理解できる。
 ON ENTRE OK, ON SORT KO はアフリカ音楽史上に残る一曲だろう。
    
○CD 35598  FRANCO, SIMARO, N'DOMBE ET LE T.P.OK JAZZ 77/79 (SONODISC,FRANCE,1998)
○CD 35603  FRANCO, KWAMY & L'OK JAZZ (SONODISC,FRANCE,1998)
 フランスSONODISCのコンゴ音楽の復刻シリーズは1998年までは継続していて、
 CDも100枚を超えたが、日本にはぱったり入らなくなった。
 この2枚は、そのうちのフランコの25枚目と26枚目。これらを聞くと思わず、
 フランコの録音全てが素晴らしいと言いたくなるほど、彼の残した音楽はどれもが
 傾聴する価値がある。
 収録曲の詳細については、このサイトにある彼のディスコグラフィーを参照。
   
○NG 047  BANKOLO MIZIKI: LES PIONNIERS...ANTHOLOGIE VOLUME 1 (NGOYARTO,FRANCE,1999?)
○NG 048  BANKOLO MIZIKI: LES PIONNIERS...ANTHOLOGIE VOLUME 2 (NGOYARTO,FRANCE,1999?)
 コンゴ音楽、1973年の録音集。解説には書かれていないが、フランス制作のTV
 ドキュメンタリー用に、ベテランのミュージシャンを集めて、1940〜60年代の音
 楽を再演させたものらしい。
 入手したばかりのため詳細については触れられないが、アンントニオ・ウェンドら
 の曲などが聞ける。
      
○82979-2  ETHIOPIQUES 6: MAHMOUD AHMED 1973 (BUDA MUSIQUE,FRANCE,1999)
○82980-2  ETHIOPIQUES 7: MAHMOUD AHMED 1975 (BUDA MUSIQUE,FRANCE,1999)
 近作ライブ(LIVE IN PARIS)も快作だった、エチオピアの代表的歌手マームード・
 アーメッドの1973年と1975年の録音がCD化された。
 コブシたっぷりなアーメッド節が堪らない2枚。
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○SWP 009  ON THE EDGE OF THE ITURI FOREST, NORTH-EASTERN BELGIAN CONGO, 1952
      (SHARP WOOD,NETHERLAND,1999)
○SWP 010  KALIMBA AND KALUMBU SONGS, NOTHERN-RHODESIA, 1952 & 1957
      (SHARP WOOD,NETHERLAND,1999)

 私が日本に紹介しているヒュー・トレイシーの復刻CDシリーズのうちの2枚。と
 もに1950年代に彼が行った録音をもとにしている。
 009はイトゥリの森のピグミーの演奏などを、010はザンビアの親指ピアノとカル
 ンブ(一弦弓)の演奏を収録している。
 詳細については、このサイトの紹介ページを参照。
 COMING MORE DISCS IN NEAR FUTURE.....?


(1999/10/28 Ver.1.0)
(2000/01/24 Ver.1.1)
(2000/04/03 Ver.1.2 修正)

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