HABIB KOITE LIVE IN JAPAN 1999/10/11


アビブ・コワテ&バマダのライブに行って来た。マリのアコースティック音楽の楽しさを堪能する夜になった。

アビブの来日は今春の単身ライブ以来で、会場は東京青山のCAY(カイ)。考えてみるとある程度名前の知れたアフリカ人ミュージシャンが東京でライブを行うのはずいぶん久しぶりのはず。また彼らの近作もすばらしい出来だったこともあり期待して出かけた。

以下に、とりあえずの感想を並べてみる。

春に代官山のカフェで行われたライブは、集まったお客ですし詰め状態となり、ゆっくり音楽に耳を傾けることができなかった。CAYはかなり小さな会場なため、今回も似たようなことになるのではないかという危ぐがあったが、盛況ではあるものの割と余裕のある入りで安心した。3連休の最終日ということが影響したのかも知れない。

メンバーは6人。
アビブ・コワテ(HABIB KOITE): ヴォーカル、アコースティック・ギター
ブバカール・シディベ(BOUBACAR SIDIBE): ギター、ハーモニカ、ヴォーカル
アブドゥール・ベルチェ(ABDUOL WAHAB BERTHE): ベース、カマレ・ンゴニ
スレイマン・アン(SOULEYMANE ANN): ドラムス、ヴォーカル
シディキ・カマラ(SIDIKI CAMARA): ジンベ、カラバス、カリニャン、タマ
ケレティギ・ジャバテ(KELETIGUI DIABATE): バラフォン、ヴァイオリン
チラシに記載された資料によると以上の通りだが、アビブやブバカールはときおりパーカッション類も手にしていた。

1時間50分ほどのステージ、予想通り過去2枚のアルバムからの曲が多かった。何曲かはほぼアルバム通りのアレンジであったが、彼らはこのメンバーである程度ライブをこなしているらしく、アレンジを変えた演奏を見受けられた。

それ以上に特徴的なことは終始リラックスした演奏、構成だったこと。淡々と一曲一曲をこなすのではなく、トークをしたくなればしばらく話し続けるし、客席から声がかかるとしばらくその相手をしたり、マリの同胞を度々ステージに上げて紹介したり、踊らせたり。少々リラックスし過ぎかと思えるほど和やかなステージだった。しかし決め時にはしっかりとテンション高い演奏を聞かせてくれた。ラス前の "CIGARETTE A BANA" などは自信にあふれる演奏だった。

アルバムとは異なり生のライブであるのだから、アップテンポな演奏も個人的にはもう少し聞いてみたかった。今回はバンドを率いてのライブだったため、客を挑発し踊りを誘発するような演奏、リズムが速まって天に登りつめていくような演奏も、何曲か挟むのではないかと考えていたのだが、この予想は外れた。コンゴ音楽(リンガラ)の影響を強く受けた他のアフリカのバンドとは異なり、ミディアムから、ややアップ・テンポの曲でも、冷静さを失わずに聞かせるのがアビブのスタイルなのだろう。ただし公演の中盤、曲名は分からないが「ピエロの曲です」の前置きした一曲の後半で、演奏のスピードを速めてジャムセッション風になった。これが非常に密な音空間を生み出しており、当夜最高に興奮した一瞬だった。できることならば次回はもっとこうした演奏も聞かせて欲しい。

今回、カマレ・ンゴニ、カラバス(半切りにした瓢箪で、伏せて叩く)、カリニャン(金属製のグィロで、錆びた音がする)などを初めて生で聞いたが、これらの楽器の存在が実に効果的だった。その反面、ケレティギ・ジャバテが今のバンドに参加している理由がどうも分からなかった。彼はすばらしいマエストロではあるが、アビブの音楽と彼の演奏が十分に混交していると、はたして言えるか疑問に感じた。

また意外だったのが、アビブのギターを堪能するに至らなかったこと。確かに秀逸なギタリストだが、例えば "WASSIYE" のギターがつまずきまくっていたのにはがっかり。ギターかモニターに問題があったのだろうか?

彼らの演奏を聞きながら絶えず頭に浮かんだのが、ABDOULAYE DIABATE の新譜 "BENDE" である。現在、マリのアコースティック・ミュージックにとても興味がある。ALI FARKA TOURE や BOUBACAR TRAOURE のようなブルース風ギター、泥臭いワスルの語り風の音楽もあるが、なんと言ってもABDOULAYE DIABATEやアビブの硬質な音楽が最高だ。彼らが実に自然体ですばらしい音楽を生み出している一方で、それとは対称的に欧米のサウンドやテクノロジーを取り込みつつ新たな挑戦を続けるサリフ・ケイタの音(特に今年出た新譜)にある種の苦しささえ感じてしまう。今度はABDOULAYE DIABATEのライブも見てみたいものだと改めて思う。

本来あるアコースティック・サウンドを楽しむという点では、やや控えめなPAも良かった(ただし、バランスや音色の点では完璧ではなかったかも?)。正直なところ、ユッスーやフェミのライブほどの興奮は抱くことができなかったものの、何よりアビブたちが現在のアフリカ音楽を代表するバンドであることを彼ら自身の演奏で証明してくれたライブだったと思う。また来て下さい!


(1999/10/12)


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