ともかくガイドブックが書いていた、往復4時間という行程は、還暦を過ぎた月一登山には当てはまらないことを思い知らされた。一般的な登山口からということで、峠の登山口の駐車場に向かった。 登山口までの林道は、よく整備されているが、岩が柔らかいのかあちこち崩落があり、角がある割れ方をした石がたくさん転がっていてタイヤがパンクしないか気になった。 駐車場は既に満杯で、仕方なく林道に戻り路肩に空き地を探した。 ![]() 駐車して登山口に着いたのはすでに11時であった。 登りはじめに既に降りてくる人がいた。 「早いですね。もう登ってきたのですか?」と聞くと、「昨夜はテント泊でした」とのこと。いいなー。 一人の男性が同じ時間に登り始めた。 登山口から暫くは樹林の中でやや傾斜もある。 30分ほどで最初の案内板、それから間もなく1434mの青い案内案内板があった。 1434m地点で北東に進路が変わる。尾根の傾斜も緩やかになり、かなり深かった樹林からも抜ける。尾根は笹原が広がる明るい道となる。 1465mのポイントには11時44分。 すこし時間がおしてきた。 いよいよ目的の釈迦ヶ岳や大日岳が視界に入ってくる。振り返ると大峰南部の山々も見える。 古田の森を下ると、正面に釈迦ヶ岳の堂々とした姿を見せる。11時40分であった。 道は快適でそれほどきつくなかった。 歩き始めて1時間半ほどで分岐の案内板がありその近くで昼食にした。12時50分であった。 昼食は20分ほどで終わった。 それから再びアップダウンを繰り返して、千丈平についたのは2時半であった。 天気はピーカンで、青空が綺麗であった。 実は行程の時間に誤りがあった。 エクセルの計算式間違いというのは怖い。 仕事でも時々やってしまうが、今回の釈迦ヶ岳登山は、駐車場までの到着時間が1時間少なくなっていた。五条で9時は予定通りだったが駐車場に着く時間が1時間違っていたのである。 次の釈迦ヶ岳駐車場へは、五条から2時間見なければいけないのが、計算式がおかしかったらしく、 エクセルの所要時間は1時間となっており、到着予定時間は10時であった。ところが実際は2時間かかり、出発が11時となってしまったのである。 間違いに気づいたが、その時はまだ頂上で1時間余裕を見ていたので、余裕があると思っていた。 登山での行程も往復4時間とガイドブックに書いているので、何とかいけるだろう、とタカをくくっていた。 千丈平を出る頃、一緒に登山を始めた人が、既にピークに登り、帰るところですれ違った。 この人のペースがガイドブック通りだろう。こちらは1時間以上の遅れがあることに気がついた。 「あとどれくらいでしょうか?」と何人かに聞くと、思ったより時間がかかりそうで、 「早く行かないと日が暮れますよ」と、誰もが時計を見ながら助言してくれた。 千丈平から、釈迦ヶ岳を見ながら30分くらいで着くだろうと思って歩いたが、頂上に着いたのは3時10分であった。 ガイドブックでは、25分と書いていたコースを、45分ほどかけて歩いたことになる。 ![]() 千丈平からキャンプ地を右にみて、水場を過ぎる頃から序々に傾斜も増す。 途中奥駈道分岐があり、頂上まではあと一息のところになる。 頂上からは近畿最高峰の八経ヶ岳から仏生ヶ岳・孔雀岳に続く尾根等、展望は素晴らしい。 頂上の釈迦如来も微笑んでいた。というよりもたもたした私たちを笑っているのかも知れない。やはり1800mmの山は、かなり紅葉していた。 やっと着いた山頂の気温は5度、駐車場では9度、下界が16度だったから10度以上の差があることになる。 ![]() 頂上でコーヒーを沸かして飲んでいると次から次へと人がやってきて、それほど広くない頂上は満員になってしまった。 でも悠長にコーヒーなど飲んでる人は少なく、すぐに下っていった。 ともかく山頂の景色を堪能し、下りを開始したのは4時であった。 途中鹿に出会った。 そして夕日を写真に撮ったのが5時20分、まだ道半ばであった。 そこから再び1465mのポイントについたのが6時20分。 おかげで予定外の夕日を見ることができた。ラッキーというかアンラッキーというか。 ともかく大峰山系に沈む夕日には感動した。 日はとっぷりと暮れ、真っ暗な道をLEDライトの明かりで下山を続けた。 お月さんが結構明るかったので、周囲もなんとか確認しながら歩けたが、木が生い茂ったところに来ると月の光が遮られ、辺りが見えなくなり、LEDライトだけが頼りであった。 このライトが電池の接触が悪く点いたり消えたりした。 真っ暗な山道を苦労しながら下り元の駐車場に着いたのは、7時15分であった。昼前に45分で歩いたところを、1時間近くもかかってしまったことになる。ガイドブックでは4時間で行けるところを、8時間以上かかっていた。 当初の予定では7時間にしていたが1時間オーバーした。それに車の時間の1時間のズレで、結局2時間オーバーの山行となった。 反省としてはガイドブックの時間の、少なくても1.5倍の余裕を持った計画で歩かなければいけないということである。 久しぶりの山行で足に身が入ってきた、やはり十分に体を動かすと全体の調子が良くなっているのを感じる。 道の途中で休憩している方がいたので声をかけ、年齢を聞くと81歳ということであった。カメラを下げあちこちの山にひとりで出かけるとのこと。口調もしっかりしていて元気であった。元気の秘訣は、と聞くと、「やはりカメラを持っての山登りだろうね」という返事がかえった。 駐車場に降りたときは、星がたくさん瞬いていた。 お月さんもこうこうと。 計画当初から夜道歩きの覚悟はしていたが、少し夜道が長すぎた。
京奈和道路を走り、168号線を南に下り旭口のところで左折した。旭ダムを目標に走った。 登山口までの道はくねくねと曲がりくねっている。じつは旭口に着くまでに道に迷った。「大峰奥駆道」という看板があり、そっちに曲がってしまったが旭ダムが見えてこない。おかしいと思いながら走ると行き止まりになってしまった。どうやら弥山方面への登山口だったようである。往復1時間ほどロスをした。2回目の登山であるが、ホーコーオンチの悲しさで、間違ってしまったのである。 釈迦ヶ岳は続日本百名山に選ばれ、奈良県十津川村と下北山村の境にある。 標高1799メートル。 ピラミッド型の山頂は大峯山系随一の眺望で、360度山々が見渡せる。それが楽しみで登る人も多い。 山頂では、 釈迦ヶ岳の名前の由来ともなった「釈迦如来」が迎えてくれる。 釈迦如来像は大正13年夏、大峯開山以来の強力「岡田雅行氏(オニ雅)」が一人で担ぎあげたといわれている。 さて、やっと着いた登山口の駐車場は満車で、かなり離れたところに車を駐めた。 きれいなトイレがあり、出すものをだし、体を軽くしてから登りだした。 出発は9時55分であった。登山口は新しい標識もあり、木道が続いている。 1434mのピークあたりまでは背の低い雑木や笹が高く茂り、視界は悪い。1434mピークには10時21分に到着した。 そこからアップダウンを繰り返すうちに展望の開けた尾根筋に入る。笹の道がきれいで快適な登りとなる。そしてそこからは木々が少なく展望がいい。この尾根筋は気持ちがいい。この展望の良さも釈迦ヶ岳の人気の秘密だと思う。 とくに南側の展望がよく、大日岳から地蔵岳・涅槃岳へと続く尾根が雄大な姿を見せてくれる。 いかにも世界遺産の道で結ばれているいるというのが分かる山が続く。 山の名前もいい、北からは仏生ヶ岳、弥山、八経ケ岳、釈迦ヶ岳、天狗山、地蔵岳、般若岳、涅槃岳。 手を合わせて拝みたくなる名前ばかりである。 私たちは歩みがのろいので、皆に抜かれた。特に若い人たちは飛ぶように登っていく。「昔は私もこうだった」とつぶやきながら歩いた。 こんもりと盛り上がったところにある古田の森には11時55分に着いた。ここはルートが下にもあるので、うっかりすると見過ごしてしまう。間もなく枯れ木がいっぱいある場所に来る。大台ヶ原を思い出し、これ以上立ち枯れが広がらないようにと願う。 ただ大台ヶ原と違うところは、完全に枯れていなくて、倒れていても葉が元気な木が多い。 快適な道が続くのだが、こちらはあちこち故障があるので少し段差のきついところのクリアに時間がかかる。 途中熊の冬眠するのにちょうど良さそうな穴があった。 千丈平には12時40分に着いた。 次の水場には12時50分に到着した。 お茶を飲んでしまっていたペットボトルに、昼食の後のコーヒー用に水を汲んだ。 道は頂上に向けて急に傾斜がきつくなる。 道の両脇の植物も、木が茂り日照も少ないためか、笹から苔に変わってきた。 急坂に耐えながら、休み休み登る。 再び笹の葉が茂る開けたところにでた。大峰奥駆道とクロスする。もう1時を過ぎていた。 奥駆出合いから15分ほどで頂上に着く。残念ながら朝からの天気はどこかに吹っ飛び、ガスってきた。周りの山々は見えなくなっていた。熊野の山は雨が多いので、降らないだけでもよしとしなければならない。 頂上に着いたのは1時23分で、お釈迦様は依然と変わらず優しい面差しで登山客を待っていてくれた 上でいつもの通りコーヒーを沸かしていると、足元のルートから4人のパーティが登ってきた。カラビナやピッケルを腰にぶら下げた人たちだったので、 「どこを登ってきたのですか」と聞くと、 「前鬼から沢登りできました」チームには女性がいて、 「しんどいのでお釈迦様の悪口ばかり言いながら登ってきたけど、お顔を見たら悪口を言っていたのが悪い気持ちになってきた。お釈迦さま悪口言ってすみません」 と拝んでいた。山の楽しみ方はいろいろあるが、沢登りも楽しいだろう。 別の人は、来る途中こけてひざなどをすりむいていた。男女二人連れの男性はソニーのフルサイズを持っていた。そして「山と高原」のスマホアプリとカメラのリュックへの取り付けアダプタを教えてもらった。大阪のおばちゃんの6人ほどのパーティーは、やっぱり大阪のおばちゃんで、景色そっちのけで世間話を大声でしていた。ドトウのパワーで登って来、そしてすぐに下って行った。 結局1時間ほど昼食やコーヒータイムを楽しみ、下りを始めたのは2時40分であった。 ゴロた石に滑りそうになりながら降りた。 山行前のペースどりに、ほかの人の1.4倍のスピードを見ていたが、やはりほぼ倍必要であることが分かった。そのためには、人より早く家を出なければいけないことになる。それが少し難しいので、いつも遅くなり下りにヘッドランプが必要となる場 ![]() ヘッドランプを使わずに降りたのは久しぶりである。 駐車場では親子がテント泊の準備をしていた。少し離れたところに置いた車についたのは6時ジャストであった。 今日は山行中は鹿に出会わなかった。鳴き声はしていたが遠くであった。 帰りの道で、タヌキ3頭、鹿1頭、ウサギ一羽に出会った。
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