39b(2005年7月1日)

災害と港湾

三村 真人

  1. 災害時における港湾の役割
     非常に密集した都市生活に災害が発生した場合に物資集散の基地である港湾が、災害時には物資供給の基地として、あるいは災害救済基地としての機能・役割を果たすことが強く求められている。
     現実に災害が発生した場合に、道路は寸断され、交通機関は完全に運行できず、障害物で町中瓦礫の山となった状況下では、自転車か、バイクか、あるいはリヤカーなどを利用する以外には、物資の輸送・持ち運びは出来ない。このような状況の中で、港湾は救援物資の保管場所として、または物資の輸送基地としての機能を果たし得る物流基地となり得るであろうか。港湾自体が甚大な被害を被り、港湾としての機能を果たしえなくなることは充分に予測できても、港湾には災害時における物資の保管・供給基地としての機能を果たす役割が期待される。
     70数年前に発生した関東大震災で横浜港は甚大な被害を受けている。その当時、横浜港の港湾施設は壊滅し、完全に港の機能は停止してしまった。
     救援物資の輸送は海運に依存せざるをえず、時の政府は日本郵船等の船会社から船舶を重用して救援物資を積載して横浜港に回航させた。
     船舶は東京湾に集結したにも拘らず、横浜港が壊滅状態であった上に、大半の艀は焼失しており、また、荷役を行う港湾労働者も不足していたため荷役はほとんど不可能であった。港湾が地震等の天地異変で甚大な破壊を被ると物資の輸送が停止する。
     震災で甚大な災害が発生した場合、港湾は物資供給の基地、とりわけ救援物資の供給基地として、その機能を充分に果たしうるであろうか。 港湾は流通活動の場としての機能を果たしており、災害発生時にも平時と同様に機能することが港湾に期待される。
     もし、港湾自体が震災により甚大な被害を被ったとすれば、港湾機能は完全に破壊され、物資供給の基地としての機能は全く果たし得ない状況に陥るはずである。そうであれば災害時における港湾の利用は考慮の外にあり、港湾は無用の長物となる。

  2. 災害物資供給基地および耐震性のある港湾
     1995年に発生した阪神・淡路大震災による神戸港の被害状況を見ると、埠頭施設である重力式岸壁は1mから5mも全面に迫り出し、天端高も1mから1.2mも沈下した。荷役機械では固定式のジブクレーンおよびガントリークレーンのすべてが被災した。特にガントリクレーンは、法線の変異に伴って脱輪したり、股裂き状態ともなり、その他の係留装置やレール等も甚大な被害を受けたのである。また、外郭施設である防波堤の法線の変位は比較的小さいものであったが、天端高1mから2.5mも沈下したため、防波堤としての機能が著しく低下した。
     神戸港へのアクセスである臨海交通施設の状況を見ると、ハーバーハイウエイ、神戸大橋や麻耶大橋では橋げたの落下、橋脚の屈折や亀裂および破壊が生じ、ポートアイランド、六甲アイランドの道路では液状化や亀裂等の破損が発生したのである。さらにポートライナーや六甲ライナーなどの新交通システムは橋脚の破損や桁の落下あるいは駅舎が損傷を受け、全く駅舎としての機能を果たせなくなった。
     一般港湾運送事業道路としては六甲大橋、大阪との間の運送では湾岸線を利用するが、道路が完全に破壊して全く利用できなかった。1週間後にはトラックは通行できるようになったが、至るところで渋滞が発生した。
     関東地域に地震が発生したならば横浜港が甚大な損害を被る可能性は充分に予測できる。
     過去の歴史に学ぶまでも無く、一度災害が発生すれば即時的な救済・救援は相当に困難と考えざるを得ない。物資供給基地および物流拠点としての機能を港湾が果たすためには、常に公共投資や補助によって必要な施設の整備・拡充が行われなければならない。
     すなわち、震災の備え、災害に耐えうるだけの、いわゆる耐震性あるいは免震性のある港湾施設が構築されることが絶対条件として要求される。加えて、ハード面の強化・強靭さのみをもとめるのではなく、港湾物流の観点から見て、港湾は災害時に備えた救援物資の備蓄・保管施設として利用できうる場所でなければならない。

  3. 災害時における物流基地としての港湾
     地震等で港湾が大被害を被った場合、本来、港湾が果たすべき機能は壊滅し、物流基地としては全く役立たなくなってしまうであろう。
     阪神・淡路大震災を契機として港湾管理者は耐震強化岸壁の建設を積極的に進めている。しかし、ある特定の岸壁の部分的な強化だけで充分に防災対策を講じたことになるのだろうか。たとへば、埠頭の液状化防止や上屋・倉庫等の耐震施設、コンテナヤードにおける冷凍・冷蔵コンテナ等の電気設備の安全・防備対策が完全に施されていることがもっとも重要なことである。
     このように安全・防備対策が充分に講じられていることで、災害時において港湾が物流基地としての機能を発揮できるのであり、また、災害発生に備えて必要・必需物資の備蓄基地として役立ち得るのである。さらには、港湾内の一角に緊急避難としての一時的な仮設住宅の設置場所として利用しうるだけの用地を確保しておくことも必要だと考えられるのである。
     これからの港湾の立地条件または存在理由を考えると災害時には被災者の避難場所として利用される場所であることが必然視される
     港湾に避難した人々は、短期間であっても、港湾内での生活を余儀なくされるわけであるから、この人々に対して生活物資が迅速に、かつ円滑にして充分に配分され、行き渡らなければならない。したがって、必要とされる生活物資をはじめ、仮設住宅用の建設資材あるいは緊急必要物資の備蓄・保管・貯蔵施設の立地場所として港湾が利用され、災害時には生活的・社会的機能を果たすことが、なお一段と期待されるのが、これからの港湾である。

  4. おわりに
     四面を海に囲まれ、おおよそ海岸線は総延長4万kmにもおよび、約10km間隔で一つの港が立地してる日本においては港湾の整備・拡充が行わなければ、円滑な物資の国際物流に対処できない。(しかし、港が余りにも多すぎる。)
     平時における港湾の存在価値は高いものであるが、地震等の災害発生時においても港湾が充分に機能して、緊急・救援物資の供給基地として機能しあるいは臨時的住居地としての役割を果たす場所として存在することが必要である。
     このためには災害に強い、耐震性および防災性のある港湾として整備・建設され、災害に対応できる食料や物資・諸機材等が常時備蓄されている港湾であることが強く要請される。

以上




環境問題からこれからの課題を考える

都市防災研究会会員  後 厳雄

 私は現在、建設現場の監督の仕事をしていますが、現場は常に天災との戦いであります。台風が来れば足場の倒壊や、資材の飛散の対策に追われ、大雨が降れば土砂の流出、地下への浸水の心配にさらされます。このような仕事の背景から防災について考える機会が多くあります。

 最近の異常気象については特に考えさせられることが多く、昨年はご存知の通り、関東で数回にわたる台風上陸、集中豪雨、猛暑などが起き、その都度現場で対策に追われる日々を送っていました。異常気象は、CO2などの温室効果ガスにより地球の温暖化が進行し、日本全体が温暖湿潤気候から亜熱帯気候に変化しつつあるのが原因だといわれています。CO2などの削減は1997年COP3京都会議で各国に具体的に数値目標を与えられ取り組むようになりました。しかし、日本は2012年までに6%削減という目標を与えられながら、現在目標に向かっているどころか1997年と比べると8.3%増えており、目標達成にはこれからの7年間で、実に14.3%のCO2などを削減しなければならず目標達成は困難になったという報道を目にしました。

 そのうち家庭は前年度比2%増ということでした。近年、自動車をはじめ「省エネ」、「環境にやさしい」といった言葉を宣伝文句にした商品をよく目にします。
 しかし、現在の日本のCO2などの削減が危機的状況にあるという背景を知り、それらの商品を意識して購入している消費者がどれだけいるでしょうか。

 日本は恵まれています。環境を改善したり、災害に備えたりする土台は備わりつつあると思います。あとは知ってもらうこと、一人一人が漠然とした危機だと捉えるのではなく、現実的な危機として捉えるように意識を持ってもらうことが重要になります。方法は様々あると思いますがITを駆使した情報提供が重要になってくると思います。最近、テレビやインターネットなどの情報ツールの影響力の大きさを感じることが多く、その重要性を認識せざるをえません。これらの情報ツールは誤った方向に走ると取り返しのつかなくなる危険性もはらんでいますが、私のこれからの一つの課題であると考え取り組んでいくつもりです。



炊き出し、救助訓練活動と親睦の集い

前田和子

 2005年5月28日(土)、鎌倉の江森邸にて、(試)「炊き出し、ミニ救助訓練」を会員有志で行った。総会前の一番忙しいときに一日をつぶすのは如何かとの声もあったが、今後の当会のイベントにつながる、テストイベントの位置づけで決行した。
 参加者:有田、安味夫妻、江森、神川、荘司、高嶋、西尾、前田、脇口、ご近所の前北夫妻。
 薪も石もスペースも充分にあり、初夏の日差しと新緑の中、脇口、有田の両名は嬉々として焼き芋つくりに取り掛かり、一方では大鍋でのカレー作りは安味夫妻が担当し、ご飯は飯盒、非常用ビニール袋、アウトドア用紙袋、ポリ容器とさまざまをテストした。無洗米で白米の他、炊き込みご飯もテストした。ご飯用非常用袋でジャガバター、お餅もテストした。ジャガイモの真ん中をえぐってバターを入れ、ホイールで包んで鉄板で焼いた。
 いろいろ試し炊きしたご飯に、肉いっぱい、仕上げにワインも入れた。非常時としては豪華すぎるカレーをかけて昼食。横須賀名物「海軍カレー」より、ずっと美味しい、都市防特製カレーに皆満足。

 午後は、三角布、ロープワークのミニ訓練を行い、片付けの後、救助活動の訓練を行った。固定した普通車にロープと牽引機をつけ、もう1台の乗用車にロープで繋ぐ、女性の力でも充分操作ができ1トン近くの車を引き上げてゆく。皆、満足。

 すばらしい場所を提供してくださった江森氏に感謝し、帰途に着いた。
 なお、江森、神川両氏の持ち出しがあったが、1人\1000でまかなった。今回は、テストイベントであるが、会としての計画に結び付けたい。




『命の笛』のすすめ

防災・生活安全アドバイザー  佐藤栄一

 阪神淡路大震災において2・3日も瓦礫の中に閉じ込められた人たちの恐怖は、誰にも気づかれずにこのまま死んでしまうのではないかという恐怖だったそうです。ある高齢女性は、救出された瞬間に、「私は、ヘリコプターに殺されるかと思った」という感想を述べました。」災害現場はそれほど騒音が多いのです。ヘリの爆音や自動車のエンジン音それに人の怒号などで「助けてー」の肉声を聞いてもらえない悪条件のほうが強いといえましょう。

 阪神方面ではこれらの体験をもとに、市民の間で「命の笛運動」が起こり、高齢者を中心に笛を常時携帯する生存対策が進められております。笛は、日ごろ肌身はなさず持つことから、できるだけ小さく軽い物で、警笛や信号ホイッスルより吹く力が小さくてすむものがよいと思います。形態も笛単体のものやライト付き、名前や血液型などの個人情報を収納できるものなどがあります。警笛のようにコルク玉が入っているものはコルクの振動が指や唇に伝わり、聴覚を完全に失った方々からは安心できるとの感想をいただきました。

 普通の呼吸リズムで吹いていると救助犬が強く反応するということも聞きました。私が運動してきた人の中で、犬を飼っている人から、「家族が笛を吹くと愛犬が反応するので我が家に救助犬が誕生した」と複数の情報が入りました。思いがけない効果でした。      
生き埋めになり身体に損傷を受けたときや衰弱したときには無くてはならぬものになります。何かをたたいて信号を作る方法もありますが、救助活動などの作業の音と混同され気づかれにくい状況になります。

 映画「タイタニック」のラストシーンでは、暗闇を去っていく救命ボートに向かって、漂流中の主役の女優が、傍らで亡くなった船員のホイッスルを吹くと、救命ボートの船員が気づいて戻ってくるシーンが印象的でした。韓国のデパート崩壊事故や台湾・トルコの大地震では、地下深い瓦礫の中から、数日後に奇跡の救出が行われました。
私たちや私たちの家族が、大規模災害時に最悪の事態に遭遇したとき「命の笛」で奇跡を起こしたいと願っております。

私の願い:今、「助けて」の声がする。
1時間ごとに5分程度サイレントタイムを作りましょう

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