38b(2005年4月1日)

定款遵守の精神と今後について

 

NPO法人都市防災研究会代表理事 脇口 育夫

 冒頭より堅いタイトルで驚かれましたか?当会も本年は設立より満10年の節目を迎えるにあたり、当会が今後歩んでゆく為の基本姿勢を改めてご理解いただき、過ちのない明るい運営を目指して行きたいと願うからです。
 設立の経緯は熟知されているとは思いますが、設立より時間が経ちますと、そこは人間、当初の精神は何処かに忘れ去り、現在の言動が正しいと錯覚してしまう事が、多々ある事は、誰しも経験がおありでしょう。
 古来より「和を以って尊しとなす」(和合の道を守ることが最も重要であるとの意味)との格言がありますが、この精神こそがボランティア活動をする私達にとって、最も大切な事柄でないでしょうか。ボランティア精神に根ざしたコミュニティーつくりが、当会のテーマ「防災と福祉のまちづくり」に通ずる事と確信いたします。
 当会はボランティア団体であります。会員の皆様は「防災」を学び、研究をして、社会に少しでも奉仕できればとの思いをお持ちでしょう。
 2頁に始まる「都市防災の回顧と展望」は、先日行われたギャザリングの時の、三浦隆名誉代表の講演原稿です。その中で、図らずも言われました当会設立時の理念を基にして、今ここで、原点に立ち返って、設立の目的趣旨に沿って、新しい「NPO法人都市防災研究会」のボランティア活動に向けて一路邁進しようではありませんか。NPO法人に移行した事により知名度も上がり、且つ、諸官庁より表彰状も賜りました事は、ひとえに皆様のご協力のお陰であります。
 さて、定款とは何でしょう。定款とは「当会の目的と精神を表したもの」であります。
 NPO法人都市防災研究会の会員の活動は、これら定款に沿って行動をしなければなりません。
 まず、責任の主体は何処にあるのでしょうか。
NPO都市防災研究会の全責任は「理事会」にあります。定款に反した会員の行動の責任は理事会にある事になります。特に、代表理事は定款第14条に「代表理事は、この法人を代表し業務を総理する」と成文化されております。
 私は皆様方の意見、意志が偏見のないものであるならば、理事会での検討議題として取り上げさせて頂きます。ですから、原則的には行動に移って頂くのはそれからです。緊急を要する場合は、必ず代表理事である私にご連絡ください。
 NPO法人都市防災研究会の今後の 活動に伴う方針を私は次のように考えております。

  1. 「NPO法」に適した会計の明朗性。
  2. 当法人にあった活動を主体にする。
  3. 当法人の発展に伴い、各活動の拡大については、当会の目的とする精神に則り、理事会の承認の上、発展させる。
  4. 我々の趣旨、意見に偏見がなきよう、我々本来の目的とする活動を遵守する。「政治、宗教、営利、名声を図る事を持ち込まない」
  5. 内閣府認証の当法人、神戸支部に次ぐ新しい支部の設立への努力を重ねる。



阪神・淡路大震災を経験した主婦達の備え

 

都市防災研究会幹事・神戸支部 泉谷 良二

阪神・淡路大震災を経験した主婦達が現在いかに備えているか寄せられた投稿を紹介します。

 

避難所【1】M.F
10年が過ぎ、子供の成長もあり、心構えにも少し変化があります。大震災の交通混乱の中、各地からの救援支援が意外に早く、有難かった事から、最近は次のように家族で時々確認しあっています。

  • 他所での被災地支援の活動には、例え僅かでも協力する。
  • いつでも外に出られるように、寝床の近くには外出着、スリッパ、水を入れた水筒を置く。
  • 家族はそれぞれ携帯電話を常に持ち、万一別れてしまった時には指定の集合場所に集まる。

【2】Y.I
 震災当時、5階建ての共同住宅の1階に居住。鴨居に固定をしていた家具の転倒は免れたが、固定をしなかった食器棚の1つが倒れ、食器の殆どが壊れた。暗い室内を見るのに、手近にあった大きなローソクが役に立ち、危険な足元の保護には、スリッパが役立った。
 転居後、5階に住み、同じ震度でも揺れは1階よりも大きいと知らされている。
家具の転倒防止、置物の転倒防止にも工夫をし、寝床の周りには落下物、転倒の恐れのあるものは置かず、室内のあちこちには、懐中電灯を置き、携帯ラジオ、水、缶詰等、保存食の備蓄は欠かさない。

【3】S.I
 家屋が全壊をして命拾いをした思いから、自分の身は自分で守るとの思いを強くし、新家屋は耐震診断に基づいて対策をとり、日常的には次の事を心掛けています。

  • 家具は固定し、寝室には倒れる物を置かない。
  • 枕もとには、3日分の水、非常食、懐中電灯、携帯ラジオ、スリッパ、笛、大きいポリ袋、ペンライト等を入れたリュックを置く。
  • 防災知識を持ち、防災への関心を持ち続ける。
  • 災害時における地域の助け合いの大切な事を知り、防災訓練や自治会の地域活動には積極的に参加をして、地域の人々との交流を深める。

【4】Y.Y
 校区内10の自治会連合会の防災会会長として、消防署の指導のもとに、年1回の防災講座、防災訓練を実施し、更に、住民が手づくりでまとめた【校区ハザードマップ】を各戸に配布中です。
 自らの備えとしては、乾パン、乾麺類、調味料、菓子類、玄米10キロ。

  • 根菜類など1週間分を目標にストックしています。

 以上の投稿のほか、「非常時対策としての主婦達の備え」について、横山佐治子さんによるアンケート調査や最近のテレビで放映された事などをまとめると次のようになりました。ご参考に。

 

【携帯用として身近に用意している物】

  • 軍手・タオル・ビニール袋(大・中・小)・筆記用具・テレカ・ウインドブレーカー・懐炉・健康保険証のコピー。
  • 家族の写真・連絡先ノート・財産関係ノート・通帳のコピー・眼鏡・補聴器・入れ歯の予備。
  • 爪切り・濡れティッシュ・靴。

【非常用として心掛けて備えているもの】

  • テント・簡易トイレ・ブルーシート(大・中・小)・ロープ・大工道具(スコップ・のこぎり・バール・ハンマー・チェンソー)・梯子・消火器・予備電池・携帯ラジオ・ナイフ。

【食料】

  • インスタント食品・麺類・レトルト食品(ご飯・お粥・病人食)・粉ミルク・離乳食・缶詰(離乳食・野菜・肉・魚・野菜ジュース・スープ・他)。
  • 漬物類・乾燥野菜・乾物・ひもの・佃煮。
  • 米・粉・塩・砂糖・油・味噌・醤油は切らさない。
  • 庭には、野菜を栽培しておく。
  • ペットの餌。

【救急手当て用品】

  • 救急絆創膏・包帯・三角巾・ガーゼ・消毒薬・傷薬・目薬・胃腸薬・風邪薬・虫刺され・その他常備薬・アルコール・クレゾール等の消毒薬・生理用品・おしめ(大人用・子供用)。

【生活必需品】

  • サランラップ・トイレットペーパー・濡れティッシュ・下着類・防寒用衣類・使い捨て紙食器・使い捨て懐炉・割り箸・楊枝・カセットコンロ・ガスボンベ・電気なべ・電気ストーブ(電気の復旧が早かった)。

【日常心掛けている事】

  • 庭には太陽光を使う庭園灯をあちこちに立てて照明を確保。
  • 庭には一番大きな蓋付ポリバケツに大きなポリ袋を入れ水を一杯に張り、腐敗防止のために塩を1つかみ入れて口をゴムで縛り、蓋をして防火用水を作った。
  • 寝室には倒れる物は置かない。
  • 家具は作り付けに変えた。
  • 玄関には不要物を置かない。ベッドの近くに落下物を置かない。シャンデリアのようなガラスでできた落ちやすい照明を安全な物に変えた。
  • 各部屋から外に脱出しやすいようにした。
  • 備蓄品の点検を怠らない。
  • 食器類や荷物などは、崩れやすい積み方をしない。不要な食器はしまう。
  • 家族で避難場所の確認を怠らない。

【障害者の思い】

  • 足に障害があるので、震災時に近隣の方やデイケアの方との連絡には大変に苦労した。
  • いざという時の対策を立てておく必要がある。
  • 高層階からの脱出は、エレベーターが止まり大変な恐怖と苦労をした。
  • 災害時のことを考え、常備薬の用意、いざという時の病院との連携のとり方を聞いておく。
  • 大きな音の出るものを身近に置く。


「人と人の連帯」を大切にしたい

 

都市防災研究会幹事/日本大学助教授 石川 稔矩

 NPO法人都市防災研究会に入会したことで、私自身の災害に対する考え方が少しずつ整理されております。それは、私自身の日常性を重視することにあるのかも知れません。つまり、私としては、生物学・生態環境論の教員として、また、東京消防庁の救命技能認定資格者災害時支援ボランティアとしての立場を、日常生活において自覚し、防災問題に前向きに対応するということなのです。

 現在、大学では、生物学・生態環境論等の講義をしている関係上、「地球の温度が0.1〜0.6。C上昇するだけで、海面が10〜25 cm上昇し、1。C上がれば約75 cmになる」ということを学生に講義しましても、どれだけの学生が危機感を持って受けとめたのかどうか、心配になることがあります。この研究会に入会したことで、生態系を含む自然環境の変化と危機問題との関連性を、これまで以上に、講義の中で強調することの意義を痛感しております。

 阪神・淡路大震災後、10年が経過しました。その間、三宅島の噴火・新潟中越地震・スマトラ沖地震・津波等、日本を問わず世界中で大災害が発生しています。確かに、阪神・淡路大震災を教訓に、国や各自治体等の災害対策は大きく見直されてきました。しかし、それでも、昨年の新潟中越地震をはじめ日本列島を直撃した台風をみましても、多様な形態を想定した重層的な防災への対応の必要性が、より深刻な形で浮き彫りになっています。また、災害の度に、ボランティア活動とその役割が広く求められていますが、この問題を取り上げてみましても、被災地の人々を助けたいという気持ちでボランティアが集うだけではなく,災害ボランティア活動とは何かを理解し、行動することが肝要ではないかといった課題が残されております。

 本研究会では、私自身、災害に対するハード面の防災意識、と同時にボランティア・コーディネーションの運動を高めたいと思っています。それは、「支援を必要とする人の所へ,支援を求めている時に、ボランティアの活動を展開する、展開できる」ということの必要性からです。
 最後になりましたが、危機管理の大切さは、単に「防災」だけではなく,地球温暖化の進行に伴い、自然災害・食糧・生態系等、様々な問題と結びついています。そして、その温暖化の元凶は私たち人間の日常的営みと不可分な関係にあります。

 世界の人口は国連の推計によれば,アジア,アフリカ地域を中心に増大を続け、今世紀半ばには100億人を超え,その中でも都市人口比率の増大が予測されています。そして、不幸なことは、私たち人間が、地球を支配し、野山を切り拓き、大都市を創造し、自分たちは全能であって、自然界の他の生物とは異なった生物なのだと、誤った観念に取り付かれていることです。その結果、地球は危機に直面しました。その危機は、SF小説の宇宙侵略ではなく,私たちの日常生活面でも、顕在化しています。

 では、「石川、その解決策は・・・」と問われた時、その回答の一つは、アダムとイブの世界に立ち返ることなのかも知れません。しかし、積み上げてきた歴史をその時代(原始共産制の時代)に戻すことはできません。そこで、大切なことは、私たち自身が地球上の他の生物との共存・共生の道を積極的に模索することです。しかし、これまた容易なことではありません。取りあえず、できることからはじめることです。

 それは、本研究会の課題の一つでもあります「人と人との連帯」であり、ボランティア・コーディネーションの実践ではないかと思うのです。段落的ですが、先ずは、人類共有のかけがえのない財産であるという認識に立って、人と人が連帯し、少しでも地球環境の悪化を抑止することです。「人と人の連帯」こそが、これまた「防災のMIND」であり、防災と福祉のまちづくりの必要不可欠な要件ではないでしょうか。

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