方丈記に‥・山崩れて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり…、恐ろしい中にも最も恐ろしきものは地震だが、それも月日が経つと人々は忘れ口にすることもなくなる、という記述があります。当時と異なる今日の複雑な生活システムの中にあって、生命・財産を守るには、震災の恐ろしさを忘れず、経験を生かした対策を積上げる活動こそ大切なことと言えましょう。
全半壊に一部損壊を含め建物51万棟、死者6千人を超えた阪神・淡路大震災から8年。兵庫県では、例えば、当時80億円を投じて設置した災害非常連路用の衛星通信ネットワークシステムが庁舎の被害で機能しなかったことから、防災専用の新庁舎の設置。また、震災の記録保存から災害対策の人材育成、調査研究、専門家の交流・ネットワーク機能も持つ「人と防災未来センター」の設置。更に、震災直後に受けた国内外からの救援隊活動や救援物資に支えられたことに鑑み、大規模な救援隊訓施設と救助・救援の資器材等物資を備蓄する大公園も建設中で、この8月、こうした復興対策を検証する震災復興10年委員会が設立されました。
近年、震災への関心が高まり、国や地方の各地でも防災対策の強化が進んでいることを心強く思います。しかし、国や自治体レベルの防災対策が如何に進んでも、一人一人に自らが、生命・財産を守る心構え無くしては、災害から身を守ることは出来ません。
あの震災時、鴨居に固定された箪笥、本・食器棚は倒壊を免れ、太い特大のキャンドルが暗闇の中で行う室内作業に力を発揮し、使い慣れた長靴が1km程ある夜道の給水所通いを助けてくれました。
こうした身近で些細な経験を地域が共有するための活動も、都市防災研究会の役割の一つかと思います。