■事態の経過
平成12年9月4日の三宅島全島避難完了後からすでに1年半以上が経過するが、有毒ガスの大量放出継続のために、現在もなお島民の帰島の目処がたっていない。
この間、被災者に対しては関係各所によって、災害対策基本法による非常災害対策本部の設置(H12.8.29)、災害救助法に基づく生活必需品の無償供与、被災者生活再建支援法適用による生活再建支援金の支給(一世帯最高100万円)などの法的措置がとられ、その他にも、義援金の配分などの生活支援、授業料等免除による就学対策、租税等の減免措置、被災者が差し出す郵便物の料金免除や動物救援施設の設置等が行われた。
(詳しくは平成12年三宅島噴火及び新島・神津島近海地震非常災害対策本部による三宅島噴火災害の被災者にとった支援一覧参照>>>)
■三宅島被災者支援の法的問題点
三宅島被災者に対する支援活動は、政府・自治体により現行法では可能な限り行われてきた。しかし、災害救助法に基づく支援は現物支給による応急的なものであるし、そもそも、都営住宅での避難生活等は避難所生活とは見なされず食事などの法的支給は受けられない。また、自立した生活支援を目的とした被災者生活再建支援法の支援金支給についても、災害前年度の所得というような長期的避難の実態にそぐわない受給条件が設けられているために支給対象外の世帯が存在した(都が独自に50万円支給)。
さらに、いつ帰島できるのかさえわからないという再建のシナリオが当事者に描けない現状においては、用意された災害援護資金の貸し付けなどの住宅対策、三宅島での農林水産業対策、中小企業対策、雇用・就業対策は名目的なものと言わざるを得ないだろう。
つまり、現行法においての災害対策は緊急且つ一時的なものが想定されていて、今回の三宅島のような継続的状況での被災者支援は想定されていない。また、これらの法的措置はすでに終了していて、現状では、新たな三宅島被災者への法的支援は何もなく、今後は被災による支援から生活保護などの社会福祉上の支援へと推移して行かざるを得ない。
■今後の支援は?
以上のように、現行法では三宅島被災者への今後の支援の道筋は見えてこない。
この点、被災者の生活再建にほとんど法的支援がなかった阪神大震災を教訓に、平成10年に議員立法で成立した被災者生活再建支援法を改正して支援金支給額を上げることも考えられる。しかし、今後起こりうる災害に対して、関東大震災級の大規模地震にも適用可能且つ地域の例外なく支援がなされるべき法としての安定性を考慮すると、支援金支給額の増額は現実的には難しいのではないだろうか。やはり、現行の災害対策関連法で今回のような継続的生活支援を補うのは困難であり、支援受給条件の緩和よる解決が望まれる。
具体的には、今回のような災害による長期避難を想定した支援法か、三宅島のケースだけを対象とした特別立法を成立させることが考えられる。ただし、この場合も支援の期間や額の決定は、従来の福祉法との兼ね合いで困難が予想される。
この点、法的解決ではないが、北海道は平成12年の有珠山噴火災害において独自に八ヶ月間生活支援金制度を実施した。現状では一定の期間を区切り、東京都がこのような政策を実行することが現実的で、国民の理解も受け入れられるのではないかと思う。しかし、この場合も、その期間が長期に及ぶとなれば支援金支給の継続は難しいだろう。
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