13階の窓の外に降る雪は
遊ぼうと誘ってくる
やんちゃな子供の動きのように
近づいたり遠ざかったり
昇ったり下がったり
まだまだ遊んでいたいと
いつまでも窓の辺りを舞って
白いクルーザーは
港に貼り付いて動けない
静かに雪はその甲板に降り積もり
まるで人が足を踏み入れたことがない
風景の一部となって凍りついているように
部屋の中は物音もしない暖かだ
僕はテーブルに湯呑を置いて
湯気を立てるお茶を飲みながら
目の前の港と灰色の海を眺めている
何もやることがなくて
時間のポケットに落ち込んだように
自由な自分の体を持て余している
時間が足りない
時間が欲しいと言うけれど
いざ時間が有り余るほどにあれば
手持無沙汰で自分自身で
必要のない作業を始めたりしている
人はきっと忙しくしていることが好きで
あるいはそれに慣れ親しんでしまったので
ゆっくりとした時間の流れをもどかしく感じるのだ
静かさに耐えきれずに僕は
テレビをつけて見る必要も無い映像を流す
天気予報では明日は雪の成人式だと伝えている
足元が濡れて大変だなと
思うのはこの土地の者ではない
旅人の無責任な感想であって
人にはそれぞれに親しみを持つ場所と
心に懐かしい風景があって
沖合の一部が明るんで見える
そこだけ雪を降らす雲が切れている
沖合に向かう風に波が立つ
まるで鴎の羽ばたきが海の上に降りて
沖合に向かってゆっくりと羽ばたいて行くようだ
きっといつからか胸に秘め
きっといつしか海の向こうに帰りたいのだ