風のささやき

海辺の印象

窓から入り込む潮風を
ゆっくりとかき回している
大きな扇風機の物憂げな動き
海からの風が止むことが
終ぞあったことは無かった
この場所での終わらない仕事
壊れてしまうまでの長い時間を
誰も言い当てることはできない
動かなくなってから言い渡される
用無しの言葉の待ちぼうけ

毎日に見慣れた海の青さは
もう心には届かない
陽ざしが海原の陰影を変えても
そのわずかばかりの変化には
心をとらえる魅力も無くて
黙々とレストランの店員は
水を運ぶために汗を流している

足を洗う波白い砂浜は
見慣れた毎日から逃れるために
この場所にきた旅人を喜ばせるばかりだ
波に乗って届けられる朝日を
やがては飽きるほどに味わい
その目覚めを呪うほどに
毎日の繰り返しに圧倒される
押し返すことで精一杯に

沢山の眩しい波が押し寄せてくる毎日に
多くの経験が足かせになってはいけない
足を洗う波の心地よさが
いつでも新鮮な今日の糧になるように
人は数多くの体に染みつく経験の上に
更なる高みの体験を繰り返さなければいけない

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