外を歩くことが気持ち良い
冬の間に家の中にいて
寒さに曲がってしまった背骨が
真っ直ぐに伸びて行くようだ
木立もこんな風に
体に芯が通るような気がして
枝先にまで神経が行き届くようになり
その蕾を膨らませるのだろうか
何て暖かな気持ちの良い陽ざし
新しい春に生まれる気持ちは
いつでも新しいままで
分かり切ったと思う風景にも
繰り返す新しい驚きがあって
寒い季節にはすっかりと忘れてしまう
暖かな陽ざしを肌にまた思い出す
人は何度でも忘れてしまうから
春は飽きることなく繰り返し巡り
思い出させることをするのだ
雪の下からまた蕗の薹が顔を出したと
伝えてくれる故郷の便り
菜の花畑に今日はひばりの囀りを聞いた
春のお彼岸に手を合わせてのありがとうを
子供は見よう見まねで覚える
桜もまた咲くのだろう
その花盛りの下を抱いて通った子供も
一目散に駆けて行く足を持って追いつけない
生は繰り返すごとに
新しい顔を見せることを止めない
だから人も生を深めていくことを止めない
そのことを思い出させるように
春は繰り返しやってくるのだと
眩しい泡沫のような新しい気持ちは
尽きることなく生まれてくることを
春は確かに教えてくれる
足元には犬ふぐりが花を開いた
カメラを片手に何処かに行きたくなった
眩しい風にいつまでも体を浸していたい
子供たちは新しい学期の準備を始めた
沈丁花の甘い香りで一杯になった口の中で
繰り返し唱える言葉の数々も磨かれていき
本当の自分の誠の言葉
人の心に宝石のように輝く時があるようにと
やがて心から唱えるありがとうが
やってきては去るすべての出来事を
肯ってくれますようにと
また巡り来た春へ深い感謝を捧げる