風のささやき

繰り返し語る

子供たちがまた
つまらないことで喧嘩をしている
最初に誰かがぶってきただの
自分の大切なカードを曲げたのだの
最後は取っ組み合いの喧嘩をして

「何度言ったら分かるの?」と
間に入って怒るのも何百回目

子供を座らせて
喧嘩をすることの無意味さを
復讐することの虚しさを
怒りの気持ちの不毛さを
大げさに伝えたりもするが

子供の耳にはまったく入らない
理解する気持ちさえない
親だけが何度言えば分かるのだろうと
徒労感を覚えて

けれど思えば自分の言葉も
何度も思いを巡らした末の言葉
その年月を超えて子供に
分かれと言うのも無理な話

芽を出したばかりの花には
大きくなることを促す眩しい陽ざしと
渇きを潤す透明な雨の恵み
葉を広げようと摘まむ
春風の優しい指先が必要なように

きっと子供にも
心耕すもう少しの苦い経験
心潤す堪え切れない涙の数と
嬉しくて温かくなる気持ち
そうしてありがとうの言葉
まだまだ沢山必要なのかも知れない

土の中に眠っているように見えて
芽を出す時を待つ種のこそばゆさを
感じている子供の心は
時として自分でも分からない衝動に
支配されることもあって

我慢強くならなければいけないのは
大人の方だね
何度も伝えることを諦めてはいけないね
僕の言葉が心に沁み込む雨ではないのかも知れない
僕の思いが空指し示す陽ざしの明るさではないのかも知れない
温かさを素直に受け止める大地の時があるのかも知れない

何度も何度も繰り返して語る
語ることで自分にも言い聞かせている
少し自信の無い言葉を吟味しながら
子供から教えてもらう
気付きの言葉を噛みしめながら
何度も何度でも諦めることはない
繰り返して語ろう