風のささやき

惜しまない手

作りあげることを
惜しまない手を持ちたい
良く分かる耳で聞いて
汚さない眼差しで眺め
きれいな言葉で口を一杯にして
諦めの無い頭で思いを巡らせ
願わくは幸せな時を
紡いでいく働きものの手を

自分の大好きなお話を
子供に読んで聞かせた
子供が目を輝かせて
そのお話を大好きだと言ってくれた
幸せでしょう

暖かな陽ざしが降り注ぐから
光を一杯に吸い込ませようと
干した布団がフカフカとして
気持ちが良いと褒められた
幸せでしょう

熱を上げた子供の水枕
時々は夜中に起きて替えていた
すっかりと熱も落ち着いて
起きてきた子供の笑顔は
幸せでしょう

本を片手に料理を作った
初めてだったけれど
子供たちが食べたいと言ったから
そうして美味しいと言われた
幸せでしょう

今日の幼稚園での出来事を
一所懸命に話している
筋立てはたどたどしい
けれど楽しかった様子
頑張った様子はわかる
聞いてもらって子供は満足げで
幸せでしょう

自分の書いた作文を
一生懸命に書いた絵を
上手だねって褒められたら
嬉しい気持ちで一杯になって
幸せでしょう

誰にも言えない嬉しい秘密を
日記に書いてみた
それが嘘でないことを確かめてみた
もう一度心で嬉しさ味わってみた
幸せでしょう

写真に収めた仲良しの
友達との写真
一緒に息を切らし走った後の
アルバムを飾る笑顔は
幸せでしょう

きっと書き出せる
幸せなことは
毎日のようにあって
すべては汗水流すことを厭わない
働き者の手のなせる業
その営みの先に待っている物

そうして僕も
働きものの手を持つものでありたい
指先に力を込めて書く文字が
誰かに幸せな時を届けることができればと
働きが足りない手をそっと叱る