風のささやき

子供と白髪頭

子供は今日に
少しの執着も見せない
後ろを振り返りもせず
ただ ひたすら前へと進む
まるで勢いづいた機関車のようだ
明るい先へ 先の駅を目指し滑走する

くたびれた大人は
沢山の昨日を足かせに
地面を引っ掻きながら歩く
残された線は山ほどの後悔の跡だ
今日を歩くにも息切れをして
軋みをあげる骨は限界を告げる

やがて今日も歩き切れなくなって
パタリとその歩みを止めて動かなくなる
ゼンマイの切れた玩具のように

その脇を無情にも
追い越してゆく子供
振り返れば背の小さな
白髪頭の残像が遠ざかる