風のささやき

この空に

この春の空はいつかあなたと一緒に
見た空だろうそれに似ている懐かしい
花が開いた香り良く芝生の緑が気持ち良い
陽ざしが眩しいくすぐったい目が笑う

桜舞う頃きっと生まれる前の昔の昔
一緒に腰かけ肩寄せて温かく
言葉なく穏やかに見上げた空に似て
菜の花の黄色が似合う柔らかい青の空

どこの国のどこの丘だろうか
あるいは川べりあるいは花畑に寝ころんで
それでも春のある国であったことに違いない
桜がたがわずに舞っている合間の陽ざし見ていたから

くるくると空舞え落ちて来い花びらくるくると回れ
塞げ僕の唇奪えあなたの唇を
そうして巡りくる春の喜びを伝えよ
あなたと一緒に迎えまた過ごして行く嬉しさを

その僕の思いあなたの思い
その時の穏やかな思いが今につながっているに
違いない疑う余地なし口にするまでもなくて
また巡り来た日曜日の長閑な春を

あなたと一緒に肩寄せながらあることを
あの時とは一緒ではないかも知れない背格好
僕が重たかったかあなたが重たかったかもう少し
凭れあうお互いその変わらない喜び

ねえそう思ってもいいよね信じてもいいよね
僕らは時を超えて一緒に過ごしてきたこと
だからこんなにもこの場所の空が初めてなのに
こんなにも懐かしく思えいつまでも見上げていたいこと

今日の空を今日の穏やかさを新しい胸の一頁に
そうして時が来れば手をつないで家に帰る僕らがいて
今日の夕食の買い物をしてそれを作る僕の順番だとして
あなたの喜ぶものを食べて欲しい僕の聞きたい満足をしてごちそうさま

また次に僕らが出会う時の思い出の一つにして
懐かしく見上げる空があって言葉がいらなくて
桜の花が舞って嬉しくてしょうがなくて
また繰り返しまたあなたから教えてもらうことばかりで

生きていることはそれを思い続けることで
きっと終わりがないよねまた二人で春を巡るよね
僕の出で立ち変わっているかなあなたは僕を見つけられるかな
あなたの顔も少し変わっているよねでも僕はきっとわかるよ

ねえ独りよがりではないよね言葉には出さない
それを分かってくれるあなたの肩にもう少し凭れて
それを受け止めてあなたが笑った芯から僕は嬉しくて
また巡るこの先のずっと先のその先の春の空の下でも
あなたと肩を寄せることを楽しみにしているんだ