風のささやき

幸せの波紋

さよなら
家で待つ人が胸をよぎる
もう春の夕映え
茜の風を払うように手を振って
夕日に小さくなる背中を見送る
終わりにしたくない遠回りの終わりに

雲を真似るように足の赴くまま
川縁に土筆の頭に触れ
菜の花と笑顔の写真を撮った
疲れた二人を待っていた木のベンチに
他愛ない日々の出来事を
持ちより語り合った
笑い合う時は
もったいないほどに速く去る

君も心ゆくまで楽しんでくれたかな
僕の心に咲いたままの
蒲公英のように飾らない
君の笑顔がずっと続きますように

僕と君はつながっている
君も誰かとつながっている
明日の僕らはまた誰かと大切な縁を結び
その誰かは誰かの手を取り言葉を交わす
楽しい笑顔が世界の隅々にまで
静かな波紋のように響き合うことを願う

その時に諍いは
心の片隅にもとどまれず
静かに姿をなくしてゆくだろう