風のささやき

にわか雨

初夏の午後のにわか雨は打ち水
読んでいた本を枕元に置いて
子供達も僕もいつの間にか眠っていた
窓からの風を気持ち良く感じていた

 人の頭ほどの紫陽花が6つ咲いていた
 さっきの散歩の道すがら
 子供達にもその名前を教えた
 いつから僕は紫陽花と覚えて
 その名を呼ぶようになったろう
 雨垂れを集めた青い花の集い
 アジサイは誰が教えてくれた言葉
 花が好きだったきっと母の口伝
 それを僕がまた子供に伝えている
 きっとまだたくさんある伝えたいこと
 それを一つ一つ教えたとして
 人は人にどれだけのことを
 伝えることができるのだろう
 伝えるべき言葉それを分かろうとする心
 それが時々としてすれ違ってしまって

僕が少し先に起きた
それでも夕食に近い時間だった
買い物に行こうと思うと
一番下の子供が眠りから目覚め笑った
いつも目覚めの悪い彼なのに良く眠ったんだな
一緒に行こうか

ドアを開けると風はまだ涼しかった
柔らかな夕日が変えた空の色
縫うように燕が旋回をしていた
まだ腹を空かせた子供の燕たちが
巣の中で待っているのだろうか
こんなに遅くまでどこも一緒だ
あれは燕だよと抱き上げた子供に伝えると
真剣にその軌道を眺めていた
子供の頬にも夕日がその指を伸ばした

風の気持ち良さに肌も喜んでいた
子供は首に抱きついて来て笑った
あと何度ぐらいこんな時間を過ごせるのかな
誰もかれもがこの時間を
幸せに過ごせているといいな