風のささやき

子供といる日

子供が熱を出して
いつもの会社を休んだ日

家の中は二人だけで静かだった
思った以上に元気な子供は
幼稚園を休んで嬉しそうだった
父親と共犯でしてやった悪戯

僕の心も何故か静かだった
子供の熱の心配以外に
浮かんでいたのは食事の準備
洗濯と薬の種類と飲ませる時間と

子供を抱き上げたら
嬉しそうな笑顔で首に抱き付いてきた
きっと体の調子も少しは違うので
心も弱っていたのかな

安心をしたのか力も抜けて
やがて眠ってしまったら
いつもより長く眠っていた

頭に手を置いたら熱も引いて
僕は残っていた片づけを済ませて
まだ起きない穏やかな寝顔の横に
そっと身を寄せてみた

温かい
僕も直ぐに眠って
あっという間に夕方が来て

日が落ちる前に洗濯物を入れた
ベランダに出てきた子供が
プランターのゴーヤに水を
上げるのだという

いいよ昨日雨も降ったからと言うと
ゴーヤが寂しがっているからと言う
そうかそれならば水をあげればと
既に如雨露を持った子供がいた

初夏の風が気持ち良い
穏やかに暮れる一日
僕と子供とを包んでくれる

子供はゴーヤからお礼を言われたらしい
ありがとうと
僕も今日は君といて
一日穏やかだった
ちっとも寂しくはなかった

本当は毎日寂しさを押し殺して
僕らは暮らしているのかな
それを強さだと言ってみたり
大人だと言ってみたり
君にも寂しさ我慢すること強要をして

本当は寂しくなくてはいけないのかも知れない
人には大切な微かな温かい物
一緒に押し殺してしまうから

子供抱き上げた時の温もり
思わずきつく抱きしめたくなる愛しさ
忘れてしまわないように