風のささやき

誕生日

君たちが産まれたちょうど六年前の今日
その日の君たちの小さな手
それが僕の人差し指をぎゅっと握った

閉じられた目を開いた時の眩しそうな顔
産まれ来たこの世はどんなにか
明るい場所に感じられたことだろう

その小さな指が
いつの間にか鉛筆を握り
拙いひらがなの文字で
ありがとうを伝える手紙を書いて

吹き消した六本の
二人で十二本の蝋燭
その跡も分からぬほどに
ほじくり返されたケーキが二つ

こちらこそありがとう
産まれて来てくれて
君たちと一緒に過ごしている時間
どれだけ僕は君たちから力を貰ったか

そのお返しにどれだけの物を
君たちに手渡してあげることができるのだろう
あまり重たくは無くて
君たちが無理なく持てる程度の
生きて行く上での大切な物を

けれどもう君たちは
僕の知らないところで一人
自分にとって大切な物を集め始めている

枯葉が寒さを奏でる夜に
身を寄せ合って布団の中で眠るこんな夜を
あといくつ重ねることができるのだろう

君たちの誕生日を祝うたびに
確かに過ぎた一年の感触が
しっかりと残る
手のひらが熱くなる