風のささやき

あなたの心が傷つく日
静かにそばにいて
犬の舌のように
その傷を優しく癒したい

あなたの流す涙
産まれてから何粒目かの
ここのところは
我慢を重ねすぎた
その色合いはいつしか
憂いが濃くなって

あなたがこれからも
流す涙の数に
あなたの心が傷つかないように
傷つかないようにと
心配しながら

けれどその心配は
あなたへの傲慢

一人一人が自分を癒す舌
きっと持っているから
乾かない傷口を抱えながら
一人で歩いて
行かなければならないから

近づきたいと思うほどに
守りたいと思うほどに
それが妨げになるとしたならば
どこに立っていれば
あなたの力になれるのだろうか

暗い海を照らす灯台のように
あるいは疲れたときには
凭れかかることのできる
大木のように
揺るがずに立っていられる
大きくて温かい者になれればいい