風のささやき

透明な茶会

それはどう言った類の重力だろう
向かい合っていると
自然と引き寄せられる心が
やがて夏の木漏れ日の下に
確かに重なることを感じる
そこにある二つの体が
透き通って風と溶け合って
心は自由になって
まどろみのように穏やかに

せっかくの時間
何を語り合おうか
たくさん話すことはありそうで
いざ話そうと思うと
口をついてでない言葉

と言うよりも
言葉と言う道具に
僕がおいていない信頼
あなたに届けたい
多くのことを伝えるには
あまりにももどかしく
感じられて時間が

けれどそんな会話のもどかしさ
重ねることも
人の生きる楽しみであると
このごろは思うようにもなり
反芻する牛の楽しさを知り

こんなことであれば
持ち寄れば良かった
茶会の道具
風の中から借りてくるよ
透き通ったカップを高く鳴らし
注がれる透明なお茶の香りに
はやる心を落ち着けて
ゆっくりと話をすればいい
緑の耳が聞き耳を立てている
その耳元を擽るような
話しはありきたりでいい
心から湧いて出たものを素直に
お茶に湿らせた口元から零せばいい

こんなにも心が近いことは嬉しい
何も持ち寄らなかったけれど
こんな贅沢な夏の午後
さらに心を近づけるために
あなたと木陰に腰かけて
陽射しと風との力を借りて
透明な茶会を開く