風のささやき

夏空と赤子と

言葉を覚え始めた
赤子を抱いて床に座って
静かな夏の午後の
青空を眺めている

赤子はアイスクリームを
食べるのに一心で
話そうとも
少しも動こうともしない

窓から吹いてくる風は
汗を誘うでも無く
心地の良い肌触り
カーテンを動かすほどの力も無くて

この空の下には
どれぐらいの親子が
こんな風に雲も動かぬ空を
見上げているのだろう
太陽の下にあれば
少し眩しそうに目を細めながら

―その全てが幸せな
 心持であればいいのだが

僕は動かない
赤子の小さな肩を
唇で軽く噛みしめてみる
後ろを振り向き笑う赤子

僕をこの世に
押しつけるその重さを
確かに足の上に感じている