風のささやき

春の公園で

ただ春の日の温もりに背中を押され
公園のブランコめがけて
一目散に走って行く子供たち

体が心が感じている喜び
大地を蹴りあげる足が
素直に表現している

その後ろ姿に
いつの間にか置いて行かれ
息を切らす僕は
殊更につまらない理屈をこねて
楽しむことを避けるように
疲れたとか忙しいとか
そんな言葉ばかりを相棒として

いつから僕はこんなにも
濁った川のように淀んでいるのだろう
勢いを失くした流れ
陽ざしをも映さぬ泥色の水面
その流れに沿って歩くのは
しかめ面の人の群

思えば世界はこんなにも明るく
心開けばいつでも手を
差し伸べる物に溢れているのに

いつの間に僕は自分の手足を
こんなにも小さく小さく
丹念に折りたたんで
枯れて行こうとするのか

鬼ごっこでようやく捕まえた
子供は息を切らし僕の胸に
頭を押しつけてくる
そうして目を合わせた時の笑顔は
ただ豊かな生命の迸り

その笑顔は確かに
小さな頃の僕と重なる
素直に似ていると思う時がある

その君の生命の流れが
淀むことがあっては
殊更に悲しく思われるから

僕も広い海に注ぎ込む心持で
声音を高々と流れて行こう
明るい水面の勢いに
春の芽吹きも人の笑顔も触れに来て

君に恥ずかしくない自分をと
励まされている
春の公園