風のささやき

視線

青いインクで白い紙に
詩を書きつけていると
いつの間にか誰かがきて
その指先をじっと眺める

肩に感じるその息吹は温かい
聞き返すほどにそっと囁く言葉
急いで詩に写しとって
口の中に反芻する

心にもしっくりときて
ありがとうを告げると
その視線は微笑んだように緩み
指先に炎が灯るように温かくなる
それで安心をして
その誰かはそっと出てゆく

指先が止まって
詩の続きは沈黙に
眠ったまま起きてこない

立ちあがり背伸びを一つ
寝静まった夜の空を見あげ
寒い空の星は
過去からの眼差し
それとも未来からくるのか
ひときわ明るい青い瞳に眼ざされ

指先にまた
熱く高ぶる言葉を感じて
椅子に座りなおす
書きかけの詩に向かう

また誰かが訪れた
その視線を肩に意識する
青いインクが文字をしたためるまで
物言わぬ思いやりを
ありがたく感じながら

人の心のぶんだけ
世界には色鮮やかな思いが花咲く
その花畑から
惹かれがままに摘む
花かごをいっぱいに満たす

あなたの
そうして
見ず知らずの誰かの
心に湧いてやまない彩り
その言葉を摘んでくる詩は花かごで

それをあなたに
捧げたくてやまない