風のささやき

哀歌

どんなにか大輪の美しい花も
一つの夜を匂いたち開き続けることは
耐えかねる贅沢なる願いとして
月下美人であるならば
惜しみなく花の重み
落としては暫く
首を揺らして揺れていよう物を

川面叩く激しい雨の礫に
曲がりくねり川は流せない水の量
濁流として濁った色合いを
周囲の河原に取りこぼし
押し寄せ溢れさせ
素知らぬ顔でいるだろうに

人は何故耐えきれない心の重さ
体から取りこぼすことを許されてはいない
その重さに見合うほどの
強さを持ち合わせてはいないと思われるのに
目の前に迫りくる生活に追われ
その重い体を持ち上げ歩くことを強いられ
まるで見たことのない物の戦慄に体凍らせ
目をそらす事も出来ず歯を食いしばりながらも

その重き心の与えられた意味はついぞは無く
あるいは人知を超えたものと思いつつも
その分からない答えの端緒をもつれた糸から
探す事を生業として流す涙のしょっぱさを
他人事として人は試練ともいい

強き人であるならば十分にそれを
噛みしめて唾液に溶かしこみ
再び笑顔に輝ける日もあるのだろうが

例えば弱き僕に過分すぎる重さ
どうして扱えばいいのかと
戸惑いの日々だけが続くと砂をかむように
口の中がざらざらと血だらけに暴力的な言葉
人込みで伏し目がちになりつつも
誰よりも苦い僕は笑うことなんぞ
ついぞ出来なくなってしまったんだと

それでもふとした瞬間に
口元には笑いが戻ったりして
僕の口からこぼれた冗談の言葉に
誰かが楽しそうにしてくれたことの驚きは喜び

聞いてみれば誰一人重い荷物を
その体に担いでいない人はいないことを思い知り
他人事は他人事ではなくなり
人は皆涙で明け暮れる物であることを知り

気がつけば重すぎた心につぶされた体を
真っ直ぐにして立っている自分もいて
人と手を取り合えたりもするのだ
素直な心からの尊敬の念を込めて