風のささやき

天使が迎えに来た朝に

天使が君のことを抱えに来たよ
別れの予感も無い朝の陽射しに突然
風になったら何をしたいと
君の耳元に囁いて

そのピンクに染まった頬が
あまりにも美しく思えたんだ
その静かに目を瞑る姿が
愛しくて抱き上げずにはいられなかったんだ
天使さえもその鼓動を速くして

誰も知らない間に忍び足でやってきて
皆を魔法で眠らせている間
君だけに聞こえる悪戯な言葉
そっと囁いた
一緒に遊ぼうよって
お空を風になって
一緒に飛んで見ようよって

白い翼がとても綺麗だった
微笑んだ顔はとても優しく思えた
君はまだ覚えたての言葉で天使に応えた
いいよ一緒に遊ぶよって

それから君はお空に不意に浮いたんだ
お父さんに抱き上げられるよりも軽々と
天使にその小さな手を引っ張られて

君はいつの間にか風になって遊んだ
目覚めたての朝の青空は
とても柔らかくて気持ちよくて
たくさんの風はふくふくとした
君の手を触りにやってきた
君は嬉しくて楽しくて声を上げて笑った

けれどふいに僅かばかりの間しか
一緒にはいられなかった
大好きだった人たちの温もりが
胸に蘇って来た時に

君の頬にも
大好きだった人たちの頬にも伝わる
終わりない雨のような涙
そっと拭い続ける
ただ優しい風になりたいと
君はきっと天使に頼んだんだ

大好きな人への思いで一杯だった君には
その風になることは
とても簡単なことだったから
天使もその願いを聞き入れて
君の体の糸を解いた

その透き通った声は耳元に囁き続け
いつしか少しずつ空模様も穏やかになる頃には
不意に大好きだった人のところから離れて
僕の耳元にも届く時があった
それは確かにありがとうと聞こえて