風のささやき

その棘を抜いてあげたい
あなたを苦しめる棘を

いつしかあなたの体に
しっかりと根を生やし
人知れず流す涙を養分とする
胸に深く刺さった棘を

あなたの心臓に流れ込む
その棘の毒
耐えきれずに張り裂けて
あなたは人知れず
空の奥で透明に吐血する

棘の痛みは
昼も夜も襲い来る獣のよう
噛みつかれるままに
耳に聞く猛獣の雄たけび

その棘が抜ければ
色を失くした頬も
仄かな赤味を取り戻すだろうに

あなたはいつしか
真っ赤に泣きはらした目を閉じて
いつ果てるのか分からない棘の痛みを
自分と一緒に眠らせてしまおうとする

その棘を抜いてしまおう
固く閉ざされた瞼が開くように
春の陽射し夏の木々
その瞳にはきっと鮮やかに映るよ

その棘を抜いて
あなたの呼吸が
穏やかで正しくあるように
自然な笑顔
桃色の頬がみずみずしくて

そうして落ち着いたのなら
手のひらに抜いた棘を眺める

ようやく抜けた棘は
本当に本当に小さく見える
傷跡さえも
どこにあったのか
分からなくなる

その棘が抜けたら
膨らんだ風船のように
軽く自分から浮き上がる
ふんわりと
痛みにもそのときには
微笑みを向けて

その棘を抜いてあげたい
心が正しい歩調を
取り戻すあなたに
あなたの明日に会いたい