風のささやき

キャンバス

水晶を通した様な
柔らかい秋の陽射し
高い滑り台から君たちは
落下傘部隊のように
さっそうと砂場に降り立っては
また空に近づくための階段を上る

君たちの王国を守るように
公園を取り囲んでいる
秋に染まった木々たちは
色取り取りの小判と
団栗の硬貨とを落とし
君たちはそれで
楽しそうな笑顔をやりとりをする

地面に丸を書いて
けんけんをして息を切らす
そうして棒きれを刀に走り出す
すべてが心飽きさせない遊びで

毎日は君たちに
真新しい顔をして近づいてくる
時々はそのすり変わる
表情の早さに戸惑いを見せて
泣くこともあるけれど

その新鮮な驚きは
君たち幼子への贈り物
それぞれの手に持った
世界でたった一つの絵筆で
君たちのまだ真っ白な心のキャンバス
素敵な色に染めてくれ
素直に感じるがままに
心から笑いながら
秋の紅葉よりも色鮮やかに

僕の心のキャンバスは
怒りや悲しみのままに
書きなぐった下手くそなスケッチで
黒光りをしているから
君たちの真っ白なままの
キャンバスが羨ましくて

―けれどその黒光りする底からは
 僕の信じる骨太な輪郭の絵が
 宝石のような色を帯び
 浮かび上がることを
 強く信じてはいるのだが