お別れの場で
真っ白になって 人は最後に旅立って行く この世への未練も薄れ 苦しみも白い灰となって 焼香の煙に紛れ ゆっくりと空に登って行く 白菊に飾られた写真は静かに微笑み 頭を垂れた僕らを見ている 足掻き続ける生の 全てを諾なう印のように どれだけか波打ったその胸も この世の涙で濡れることもなく この世の出来事に驚くこともない 読経は残された僕らのためだけに 終わることなく続けられ 読み終えられた 意味深い小説を閉じるように 胸の中に漂う 言葉には取り出せない余韻に 人の生の奥にある物を見つめようとする僕の 肩で何かが微笑んでは消えた そんなにも焦らなくとも 大丈夫だよと告げる 先に出かけた人だけが知る優しさが 祭壇の白い花畑に風が吹き 光が溢れ出す様に思えた