風のささやき

僕が広げる 黄色の傘の下
急に 真剣な顔になる男の子が
僕を見上げて聞いてくる
「ねえ、どうして雨が降るの?」

思いがけない質問に
僕は一瞬とまどってしまう
何と言ったらうまく答えられるのだろう
男の子の真剣な眼差しが僕を見ている

「植物が喉をかわかせているからだよ・・・・・」
それは少しへん

「空が涙を流しているんだ・・・・・」
それでは空がかわいそう

「大地の水が蒸発してでは・・・・・」
ではわかりっこなし

答えにつまった僕は聞いてみる
「どうして雨は降るんだと思う?」

すると男の子はあっけらかんと
「わからない!」

「そうか」と僕は笑い出す
「わからない」が僕の胸には
雨音よりも高く透き通って響いた

何とか答えを見つけ 安心しようとすることは
きっと大人の悪い癖

空の涙も花への恵みも
化学的な反応も
みんな一つの間違いない答え
だから「わからない」ままでいいんだと
新鮮な発見に喜んでいたら

もう僕の小さな先生は
軽やかな心のままに
違うところを眺めていた