風のささやき

乳飲み子

えもいわれぬ笑顔の乳飲み子が
布団の上に横たわる
出来たてのフワフワと甘いお菓子のようだ
その頬っぺたをそっと唇でつまむ

   ○

あどけない無防備は
武器だと思う
放ってはおけずに
すぐにかまいたくなる

   ○

昼夜となく乳を飲む乳飲み子
一心不乱に何て必死で

形こそ違え僕らも毎日
乳のような栄養を
与えられて生きているのに
ちょっと不真面目に摂取している

   ○

あごに拳をつけて
眠る乳飲み子は
瞑想する仏像のようだ
苦しみをすべて越えている

   ○

ちょっと置いただけなのに
もう汗をしっとりとかいている
抱き上げてもらい
風に吹かれたくて泣くのか

   ○

乳飲み子の布団の上に
二匹の蠅がたかっている
乳飲み子からももう
死の匂いは漂っているのか

   ○

乳飲み子のじっと目を見る
乳飲み子もこちらの顔を
まざまざと見る

その瞳
映るこの顔
歪んでいないか