乳飲み子
えもいわれぬ笑顔の乳飲み子が 布団の上に横たわる 出来たてのフワフワと甘いお菓子のようだ その頬っぺたをそっと唇でつまむ ○ あどけない無防備は 武器だと思う 放ってはおけずに すぐにかまいたくなる ○ 昼夜となく乳を飲む乳飲み子 一心不乱に何て必死で 形こそ違え僕らも毎日 乳のような栄養を 与えられて生きているのに ちょっと不真面目に摂取している ○ あごに拳をつけて 眠る乳飲み子は 瞑想する仏像のようだ 苦しみをすべて越えている ○ ちょっと置いただけなのに もう汗をしっとりとかいている 抱き上げてもらい 風に吹かれたくて泣くのか ○ 乳飲み子の布団の上に 二匹の蠅がたかっている 乳飲み子からももう 死の匂いは漂っているのか ○ 乳飲み子のじっと目を見る 乳飲み子もこちらの顔を まざまざと見る その瞳 映るこの顔 歪んでいないか