風のささやき

雨の夜に

その激しい雨の音には
普段物音では目を覚ましたこともない子供たちが
布団から体を起こしたほどだった

その夜の雨の始まりは
鳴き疲れた蛙の喉を潤すにいい程の
ほんの僅かな雨粒からだった

それがしばらく続いた後に
まるで雨雲が意志を持って歩いて来たように
雨音は大きくなって
屋根を壊そうとするかのように降った
太い腕の大男が如雨露で
この家の屋根に水を巻きに来たように

屋根を叩く雨の音はしばらくの間続いた
子供たちはその音にも慣れてしまい
また闇の中に眠りについた
家の猫だけが僕と一緒に
少し緊張しながら雨音に耳を澄ましていた

昼間の畑では子供たちが蒔いた
豆粒が眠りから覚め
地表から顔を出したところだった
明日も長靴を履いて
赤い如雨露で水をかけに行く
面倒見のいい子供たちの姿に負けないように

きっと天は大急ぎで雨雲の手配をして
この家の上にたくさんの雨を降らしたのだ
先手を打って夜のうちに
仕事を終わらせてしまおうと
明日の朝には水やりをやらなくてすむから
ちょっと朝寝坊を楽しんだりして

それでも子供たちは
明日も畑に水をやりに出かけるのだろう
今夜の雨の分だけ背丈を伸ばした豆の上に

少し雨の音が小さくなってきた
準備していた水もなくなったのだろう
もう十分だ
ありがとう