風のささやき

お腹の中の君に

いつの間にか目立ち始めたお腹のあなたと
オレンジ色の電車に乗る
目を伏せるあなたが身に纏う
白い妊婦服のレースが揺れて
隠そうとしても隠せない
お腹は僕には嬉しい膨らみ

あなたが集める視線は
新しい命への祝福に満ち
席を譲ってくれた人の
温もりの上にあなたは一息をつき
そっとお腹の上に手を置いている

その胎動を自分の身の上にも感じるように
微笑む人々は沢山で
その心地よさに支えられながらも
有難を言えない僕は言葉足らずで

頑張れ 皆が期待しているよ
お腹の君が僕らの仲間になることを
羊水の中で爬虫類、鳥類、哺乳類と姿を変えながら
今では性別もわかるほどに僕らに近づいて

頑張れ 沢山の力をくれようとする君
ありがとう
日々にすくすくと育ってくれて

少しだけ開けられた窓からは
夏の香りのする風が吹いてくる

電車の振動は僕に揺さぶりをかけて
僕の自信を危うくするから

僕の腕が 緊張をしている
お腹を大きくした あなたの背中を支えようとして
これから生まれてくる君を 支えようとして