風のささやき

春の公園で

朝早く目覚めて公園に行こうとせがむ
子供に働きかける春の作戦
せっかくの休日
まだ眠いのに
子供は春風に引っ張られて
大人は子供に引っ張られて

   ○

芝生で食べるお握りが美味しい
「皆で食べると美味しいね」と
その中にはもちろん
春風も含まれているんだろう

   ○

春のせせらぎは空色の流れ
延び縮みしているのは
橋の欄干でジャンプする子供の影
さっき大きな口でおにぎりを
頬張っていた


   ○

君は桃の味で
君はバニラ味

子供の頬張るソフトクリームが
早く解け出してくるので
慌てて取り上げて舐めたら
酷く怒られた

   ○

辛夷が咲いているよと声をかけるのに
「眩しいから」と
興味を示さない子供の
美的感覚を疑う

   ○

竹林の奥の空
清められ祓われた
清明なる御心が鎮座する

   ○

目線がやたらと空に会う
冬の間はこんなことが少なかった気がして

子供の走る姿と
空との間を
幾度となく往復していた
僕の視点