風のささやき

白桃

朝日につつまれたその頬が
白桃のように見えていた
子供よ

眠いとひとしきり泣いた後
寒いと僕の布団に入って来た
君の小さな体は
押し競饅頭の後のように温かで
湯たんぽのように抱いていたら
いつの間にか布団から顔を出し
枕に頬杖をついている

子供よ
白い壁に向かっている君の目の前に
大きな青い海原が
横たわっているような錯覚を覚えた

まだ乾かない
涙の筋伝わる目の中に
夏の白い浜辺の陽射し
潜むように輝いている

口元はそうして
何が楽しいのだろうか緩み
たくさんの未来の可能性を
感じることが楽しいように
ニヤニヤとして

僕はいつからか
こんな眼差しを失っているのだろうか
子供よ

生活という型枠の中に
押し込められて
力ないうつろな目となって

いつまで人は夢を見られるのだろう
「夢見る力のある限り」と呟くその答え
心の底から信じていたいと

子供よ
白桃のように見えていた
その頬に齧り付いてみた