風のささやき

お土産

玄関のドアが開き
泥んこのジャンバーのままで子供が
お土産だよと勢い良く
台所にいた僕に飛んできた

ポケットの中からはたくさんの石
パパにあげるのだと
選んで拾ってきたのだという

家の中で掃除をしていて
今日は一緒に
公園には行けなかった僕の面影を
きっと子供は携えて出かけた
小さくなって石を拾う
その脳裏に思い浮かべながら

どうもありがとう
小さな手で拾い集めた石だから
どれも小石ばかりだけれど

とても重く感じられる
その気持ちをいつまでも
大切にして欲しい

人を思う気持ちはきっと
君を豊かにしてくれるから
人からお返しにもらう
透き通ったエネルギーを
宝石のように胸一杯に溜め込んで
それはやがて空に通じる力になるから

随分と無駄に
年を重ねてしまった僕が
自信を持って言える数少ない本当

子供は牛乳を飲んで
それから石のことなどはそそくさと忘れ
直ぐにテレビの前に行ってしまった

僕は石のやり場に困って
鉢植えの中に何気なく置いた