風のささやき

溜息

雨上がりの不思議な夕暮れの色に気がついた子供に言われて
子供たちを抱きかかえながら窓の外を眺めた

すごく赤いねと言うと
違うよピンク色だよと怒られた

確かに子供の方が正しい
色合い的にはピンクだったから

夕日は赤いという大人の思い込み
毎日を通り過ごすための常套手段を諌められて
苦笑いする僕は子供たちを少し強く抱き
しばらくは窓の外の夕暮れの色を眺めていた

鳥が何処かへと帰ってゆく
随分と高いところを飛んで行くな

僕らと同じような会話が
どれほど多くの屋根の下で
交わされていることだろうと思うと
少し胸が熱くなる

その夜は暖かなおでんを食べて
一日の出来事に満足しきったように
深い眠りについた子供たち

その寝顔に添い寝をしながら
満足を覚えて眠気を感じる父親の欠伸も
きっと多くの屋根の下の出来事

静けさを取り戻したテーブルの上で
今日の終わりに安堵して
祝杯をあげる
そうしてその手休めるときに
再び浮かび来る憂鬱

きっと毎日に倦みながらも
それを守りたい人々は
終らない諍いの中に身を投じ

口にしたビールの味が一層ほろ苦い
何の解決策も持たない僕の
胸からは鈍い溜息が
しおれた風船のように漏れてくる