風のささやき

流れ星の短冊

七夕の飾りに模様を描く
子供の人差し指が絵の具に触れる

最初はブルーで
その次にはピンク

黄色は使わなくていいのかなと
口にせずに思いながら

流れ星の短冊に
描かれてゆく小さな指紋のついた
星の数を眺めている

これからどんな色彩で
君は自分の人生を
描いていくのだろう
そうしてどれだけの願いが
その生には散りばめられて行くのだろう

初めて訪れた幼稚園の教室には
夏の風が淀んでいる
マリア様のお顔も今一つ冴えない青白さ

僕の知らない表情で作業をしている子供の背中は
小さいけれども一人前で
もう君は一人の人生を色づけ始めているんだね
これから続いて行く君の生の長さに
勝手に呆然として眩暈を感じて
遠い旅へ送り出すことへの
酸っぱさを感じている

僕の願いの果たしていくつが
実際に叶えられたことだろう
もう願うことすらできなくなったことも増え
母に会いたい祖母に会いたい
せめて夢の中では叶えて欲しいと思う

けれど願わずに叶えられて行く
嬉しいことも沢山あるから
人生も捨てたものではない
例えば君と会えたこともその一つ

どこまで僕は君の背中に
手を置いていてあげられるだろう
と思っていると
そっと君は手を休めて

もう作品が出来たの
あっさり過ぎるよ
他のお友達はまだ
一生懸命に作業をしているのに

直に二個目の短冊を先生からもらって
また指先を色づけ始めている

やることが一杯あり過ぎる子供と
手戻りばかりを繰り返してきたその親と
窓の外には十字架が明るい