風のささやき

寝床の中で

ふくろうの話をすると
子どもたちは途端に目を輝かす

夜はお皿のように真ん丸な目をした
フクロウ、みみずくの飛び回る時間
魔女と天狗も一緒に山からやってくるから
目をつむって息をひそめてと
教えられて頭隠す寝床の
ほんとうに恐ろしく
少しは笑いこらえる楽しさに
ピンクの毛布が波打っている

フクロウとミミズクが鈴なりの大きな木も
うさぎが迷い込んだ魔女が踊る山も
海坊主のいる海もナマハゲのいる里も
みんな君たちの暮らす世界だ
少なくとも今の今には偽りもない

しっかりと目を閉じながら
やがては始まるお話の時間
桃太郎やかぐや姫
三匹子の子豚のお話も
いつしか僕も布団の中で
心躍らせて聞いた
語り継がれてきた物語
耳元にしっかりと残って
諳んじられる僕の体の一部分
亡き母が僕へとくれた贈り物
抱くことなかった孫への息遣い

僕は祖母の語り口も思い出す
山形の方言が柔らかで優しい
あれを聞いたら子供たちは
楽しそうな笑みを浮かべて
静かに眠ってしまうんだろうな
僕がそうであったように

やがて話のネタもつきた頃には
子どもの一人は眠ってしまった

まだ起きたままの一人の子供に
ほら寝ない子は連れていかれる
お化けの世界にいってしまうよと
壁をコンコンと叩いてみせて
眠らない子供への最後通告として
眠気を感じる僕のお休みの合図として