風のささやき

巡り会い

あなたの束ねた栗色の髪が揺れ
春の陽ざしと風の香りとがした
だから僕はあなたの方へ
自然と視線を送った

あなたの瞳には
深い緑の地平線が広がっていた
その上にある太古の色の青い空には
クリーム色の雲がゆったりと休んで
だから不思議な映像を眺めるように
僕はあなたの瞳から目を離せずにいた

あなたの笑い声は
耳元にとても快く
まるでエリカの花が一斉に
風に楽しく鳴っているようで
だから僕はその音に
黙って耳を傾けていた

するとあなたの手が
僕の肩にそっと触れた
それは桜の花の影のように
とても軽やかに降りて来て

次の瞬間
僕はあなたの胸元に
抱き寄せられていた

まるで僕が頭を休めるために
用意されていたようなその場所で
僕は静かに瞳を閉じた
心臓の鼓動と共に
暖かなものが流れ込んできて

僕の中に大きく膨らむものを感じた
それは僕の中に隠されていた沢山の気持ち

あなたの胸の中で
心を裸にした時に
解き放たれた

どれぐらい僕はそうして
あなたの胸の中に眠っていたことだろう

あなたの顔の上には
たくさんの季節がめぐり
あなたはその度ごとに
色とりどりに姿を変えて
僕はその移り変わりを肌で感じていた

ゆっくりと僕が目を開くと
あなたは僕を見て微笑んだままだった
まるで夜を照らす月のような静けさで

僕の中でバラバラになっていたものたちが
許し合い
肩を寄せ合い
すべてが僕の大切な一部分になっていた

僕はまた目を閉じた
今度はあなたと過ごしていく
新しい時間に思いを巡らすために